金とドル資産

26日の日経一面に「世界の中銀、ドルから金へ 保有量が31年ぶり水準 通貨、膨張で価値低下」とあります。金の話題は忘れたころにやってくるのですが、年の瀬でもありますのでドル資産と金について考えてみたいと思います。

MicroStockHub/iStock

金投資のメリットとデメリットは何でしょうか?金は政治的色のつかない国家や中央銀行が認める資産であることです。デメリットは重いので持ち運びが大変なことと金利が付かないことです。しかし、金利が付かないことにおののく資産運用者は今や少ないでしょう。世界低金利時代で銀行に預けた金利でどうこうする時代ではありません。株式市場では無配の株式はいくらでもありますがむしろその値動きに期待して積極的に取引されています。

ではドル資産の代表格である米国債。日本は世界一の座を守っており、保有高は現在1兆3000億㌦規模です。二位が中国で1兆㌦程度、あとは英国が5700億ドル、アイルランドが3200億㌦で10位の台湾になると2300億㌦程度です。つまり、日本のアメリカ国債保有額は尋常ではありません。対外資産も世界一の座を維持しており、依然、金持ちニッポンの様相は強いのです。

では日本はなぜ、それでも米国債を買い増しし続けるのか、といえば巨額故に他に買うものがないというのが理由。生み出す資産がアメリカに吸い込まれている、これが構図です。

ではこれが健全なのか、といえばいいわけがありません。アメリカは政府部門が使いすぎて毎度議会が予算のことで紛糾しています。それでも国の借金である国債を発行すれば日本が買ってくれるさ、と高をくくっています。いうなれば暴騰するアメリカのインフレもショックアブゾーバーの日本のがま口があるさ、ということになります。高い不動産も時給何十㌦の労賃も最終的には日本が支える一方、日本は長期のGDP成長率が主要国最低、賃金も上がらないという「自らは貧するもアメリカを富ませる」ということになります。

しかし、日本は政治的にアメリカの国債を買いたくないとは言えません。ましてや中国のようにたまには売ってみるか、という選択肢もありません。アメリカが破綻したら「借金のカタ」にアラスカをくれるのか、といえばそれもありません。その点では日本は人が良すぎるのです。

日経の記事には世界の新興国が金を買い増ししているとあります。その背景には中央銀行の通貨不信感が根底にあるのだろうと思います。日経にもあるようにアメリカは50年でドル発行量を30倍に増やしているのです。一度発行した通貨を減らすことは論理的に可能でも現実問題としては極めて困難です。となればリアルの価値があり、政治的に色づかない金への逃避は当然あってしかるべきなのです。

金には採掘限界があります。プール4杯分です。もちろん、海底採掘などを考えれば別かもしれませんが、金には採掘コストがあるのです。今なら1トロイオンス800-1000㌦ぐらいでしょうか?採掘コストが高すぎれば金採掘は止まり、金は高騰します。これを類推すると金利はつかないけれど世の中の物価が上昇し、金の採掘現場がより困難な地域になり環境問題も増えてくれば金は2000㌦でも3000㌦にでもなり得るし、買い手もいるということです。

私がビットコインはこの金の仕組みに似ているので上がるのだろうな、と思ったのもこれが理由です。そしてビットコインと金は石油などの資源のように減らさずに再生使用ができるのです。つまりリプレイスされるリスクが小さいともいえるのです。

ですので新興国は借金大国のアメリカの国債を買わずほかのオプションを探る中、日本はほとんど無造作にアメリカ国債を購入しているともいえるのです。役人に言わせれば「アメリカは今、潰れることもないし、きちんとリターンもある。国家の資産は極力リスクを低減させるのが役人の仕事である」ということになります。極端に心配性の日本の行動規範でもあります。

ならば、個人的にはアメリカに「国債を買ってやっている」という姿勢を見せるべきでもっとアメリカとの関係を対等にすべきと思います。アメリカ大統領は日本に表敬訪問に来る、それぐらいの意識を持たねば日本は強くなりませんよ、岸田さん。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月28日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。