凋落する日本経済は再び立ち上がれるのか?

英国のシンクタンク、経済ビジネス・リサーチ・センターが発表した最新レポートで2031年に日本はGDPでドイツに抜かれる、とされています。2021年の日本のGDPは5兆3800万㌦、4位のドイツは4兆3000億㌦となっていますが、これが逆転されるという訳です。GDPは人口が多い方が増えやすいのですが、ドイツ人口は8300万人であることを考えるとそれより5割も人口が多い日本が10年後にGDPで抜かれるというのは穏やかではありません。

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先進国のGDPは全般的に停滞気味なのに対して新興国で人口過多の国はこれから20年で急成長が見込まれています。PwCの予想ではインド、インドネシア、ブラジル、メキシコは2050年には日本を追い抜き日本はトップ10にかろうじて引っかかる水準とされます。

GDPのみで語ればこのような将来予想はやむを得ないのですが、人口一人当たりで見るGDPでは日本は既に世界24位(2020年)とほとんど目立たない位置にあります。金持ち日本、対外資産一位の日本もどの切り口で見るかでまるで絵面が違うともいえます。

一定年齢以上の方にとって日本が世界の中枢であったことは誇りだろうと思います。常に世界のリーダー国の一角であったのですから、今の日本の立ち位置に忸怩たる思いを感じている方も多いでしょう。明治維新で西洋に学び、長らく東洋の代表国として欧米社会にあらゆる面で挑戦し、経済的に世界第2位の地位まで上り詰めたのは昔ばなしなのでしょうか?

最近ふと思うことがあるのです。欧米との物価の差異は何をもたらすのか、と。日本人が海外旅行に高くて行けないというぐらいならかわいいものですが、私は物価が生み出す上下関係が生じるのではないかと思うのです。仮にアメリカが今後も技術や新製品に於いて世界を凌駕し続けるならばそのアメリカ製品やサービスを日本は購入しなくてはいけません。それは一般消費財から防衛機器に至るまで全てです。

我々はメードインジャパンを誇りに思っていました。しかし、衣料はほとんどが中国などアジア諸国製をなんの躊躇もなく着ています。価格優位性が強く働く製品やサービスは人件費が多少上下しても大量生産する国や会社が有利になるのは当然です。アップルの携帯も日本人にはだんだん手が届かなくなり、同社のSEという古い機種が一番売れているという実態は無視できません。2022年のコロナ明けには消費が急拡大するだろうと言われていますが、それは少額の旅行や飲食といった部類です。

海外のトレードショーで日本製品も紹介されるのですが、単一機能としてはよいのですが、その機能が顧客にとってどういう意味があるのかを示すことができない商品やサービスは割と多いのです。そして無駄な機能が多いわりに価格が高いのです。「その部分、いらないから安くして」という声も耳にします。

2030年、我々は自国製品やサービスより他国のそれを好んで導入し、経済的であると実感するでしょう。日本には中国製の自動車が普通に走っていると思います。その時、日本は何を生み出せるのでしょうか?「日本独自の…」はもう通用しないのです。なぜなら圧倒的独自性の賞味期限は50年前は5年も10年もありましたが今はインターネットと同じ瞬時で世界と競合する時代なのです。そして今のキーワードは「世界水準」です。

日本が旅客機すら自前で作れないのはモノづくりの技術以上に乗り越えられない規制やデザイン、機能面、交渉力といった進化する社会と複雑化するルールにおいて後塵を拝しているのが理由です。

30年前、カナダに来た時、多くの白人が日本の高い物価に畏怖の念を抱いていました。そしてその国から来たビジネスマンはどんな奴だろうと戦々恐々としていたのです。「コーヒー1杯10ドルの日本」というのは物価が生み出す国力であり魔力であり、威信でもあったのです。

そんな日本を変える方法はいくらでもあります。その中で私が思うのはとにかく会社の数を減らせ、ということです。あまりにも猿山の大将が多すぎるのです。自動車会社も7つもある必要は全くなく、3つで十分です。その代わり企業経営の圧倒的効率化を図り、給与を2倍にするアメとムチ政策を進めるべきです。上場基準ももっと厳しくして若手経営者に「上場を成功のゴール」と思わせないようにしてほしいのです。

それからこれを言うとひんしゅくを買いますが、日本は高齢者第一主義が強すぎます。日本を支える現役第一主義であるべきです。政治家も投票に来てくれる高齢者への見返り的な姿勢が強く出るのは儒教的思想と言われても致し方ないでしょう。それゆえ、選挙も若い人が参加しやすいオンラインなどの手法を早く編み出すべきなのです。それができると政党の色は驚愕の変貌を遂げるはずです。公明党や共産党は瀕死で維新や立憲が大きく伸びるでしょう。

最後に若者は海外見聞にもっと積極的に行くべきです。そしてこの2年間の冬眠の間に世の中がどれだけ激変したか、肌身をもって感じて欲しいのです。残念ながら日本人の英語力は貧弱ですが、世界の若者と語り合い、価値観を見直し、自分への刺激を持ってもらいたいと思います。日本のアルゼンチン化は冗談で済まないかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年12月29日の記事より転載させていただきました。