新興国にも歯が立たない「邦銀」という絶滅品種

自宅の近くにある「緑の銀行」の支店が次々と閉鎖され、不便で困っています。

溜池山王の交差点にあった赤坂支店や、西新橋にある虎ノ門支店は閉鎖され、新橋支店に統合されてしまいました。

これは超低金利下で経営環境が厳しい状況になって、コスト削減をするのが目的と思われます。他のメジャーな銀行も、路面の支店を空中店舗に集約するなど、店舗合理化を進めています。

日本では銀行というと、このように衰退産業の代表のように見られていますが、世界を見渡すと逆に金融ビジネスでイノベーションを実現している国もあります。

日本がお手本にすべき金融ビジネスというと、アメリカやイギリスを想像するかもしれませんが、中央アジアのモンゴルやカザフスタン(写真)です。

私が尊敬する金融グループのオーナーは、中央アジアでビジネスを展開しており、現地の情報を伝えてくれます。

例えば、モンゴルというとゲル(テント式移動住居)に住んでいる遊牧民というイメージです。でも、今やQR決済アプリが普及し、お金の貸し借りはAI(人工知能)により全自動で省力化。そして投資はネットで証券と暗号通貨というのが当たり前に広がっているそうです。日本よりデジタル化が進んでいる印象です。

また、カザフスタンは日本人には馴染みがありませんが、日本の5分の1の人口で、金融マーケットの規模では10分の1以下の国です。しかしKASPI銀行(カスピ銀行)という巨大銀行があり、時価総額は何と2兆6000億円以上です。日本のSBIホールディングスの時価総額が7,500億円程度ということと比較すれば、日本の金融業界のグローバルなポジションがわかります。

未だに紙の書類と印鑑で対面での手続きを原則とする日本の銀行は、変化を恐れ保守的な経営を続けてきました。先進国日本という過去の栄光にとらわれたまま衰退し、気が付けば新興国と見下していた中央アジアの金融機関に、抜かれていたという訳です。

日本では年末にも、青い銀行がもはや恒例となったシステム障害を起こし、金融イノベーションどころか、金融インフラとしての存在価値が問われています。

昭和バブルの頃は時価総額で世界を席巻していた邦銀が、30年で絶滅の危機にひんする状態になる。誰にも予想できなかった悲しい現実です。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。