任期満了が迫っているマッタレッラ大統領
イタリアは今年2月3日にマッタレッラ大統領(80)の任期が終了する。大統領には議会解散権、首相任命権そして非常時の軍隊指揮権が付与されている。マッタレッラ氏は大統領として国民からの評価が高く、これまでの歴代大統領の中で最も人気の高い大統領だと評価されている。
マッタレッラ氏は政党キリスト教民主主義に属し、3つの閣僚そして副首相に就いた経歴を持つ政治家である。その後、司法界に籍をおいたが、2015年に当時の首相であったマテオ・レンツィ氏の推挙を受け議会で承認されて同年2月に大統領に就任した。
後任にドラギ首相が有力
次期大統領選出の為の上下院の議員による投票は今月24日から開始される。マッタレッラ大統領は彼のポストを引き継ぐ者に対して新年を迎える前の12月31日に次ぎのように述べている。「大統領になるにはこれまで帰属して来たすべてのものを放棄し公平性をもっての関心ということにだけに集中して責任を負うべきである。更に、制度上における(大統領としての)権限と特権を持つことを守って行かねばならない」と指摘した。1月1日付「ABC」から引用)。
マッタレッラ氏が大統領就任中も政権は揺れ、5回も政権の交代があった。最もデリケートだった場面としては昨年1月の政権の不安定から首班指名においてマッタレッタ大統領は敢えてドラギ氏という欧州中央銀行の前総裁を召喚して首相に任命して組閣を指示した。この決断には議員の間では当初僅かの支持しか得られなかった。
後任として大統領になりたいと望んでいるのが元首相のベルルスコニー氏(85)である。ところが、マッタレッタ大統領は内心それに反対している。ベルルスコニー氏では右派からの支持は得られるであろがすべての政党からの公平な支持を得るのは難しいと判断しているからである。
マッタレッタ大統領が次期大統領として白羽の矢を立てているのがドラギ首相(74)だ。実際、ドラギー氏も大統領というポストに関心あることを仄めかしている。ドラギ氏は「私の個人的運命は思慮にはない。私はひとりの人間として望まれるのであれば祖父であっても制度の為に尽くしたい」と述べて、次期大統領に指名されれば務める意思のあることを敢えて表明したのである。(12月22日付「エル・パイス」から引用)。
ドラギー氏が大統領になると現在の内閣を維持するのは容易ではない
問題は大統領に選出されれば、首相のポストを明け渡さねばならないことである。イタリア同胞以外の6政党が超党派で集まった政権である。それもドラギ氏が首相としてうまくまとめているから政権が維持されている。戦後から頻繁に首相が代わって来ていたイタリアでドラギ氏が首相になって安定政権が続いている。そのことから、これまでイタリアの改革の為に既に懸案事項として51項目が実施に移されている。
余談ながら、日本も今の自民党による単独政権からおさらばして政界以外の企業や国際組織で活躍している日本人を首相に就かせる必要があろうと筆者は考えている。今の自民党と野党では日本を成長させる政治は無理だと思うからである。
ドラギ首相は首相になる以前から将来の大統領候補と目されていた。本人もそれを意識し関心をもっていたようだ。ただ今年大統領に就任するとなると、首相の座を誰かに明け渡さねばならない。そこでドラギ氏が考えているのが現在の超党派の閣僚をそのまま維持して、その上に彼の後任としてテクノクラートを首相に就任させるという考えをもっているようだ。
今年、大統領に成る機会を逃すと次は7年先になるということで、その時点で大統領に成るというのは非常に難しくなるとドラギ氏は考えているようだ。そこでドラギ氏が首相の後任として考えている人物は現法務相のマルタ・カルタビア氏だ。彼女は法律家であり、また幅広く政党間でも支持されている。或いは、経済相のダニエレ・フランコ氏が任命されるという予測もある。
いずれにせよ、問題は仮にドラギ氏が大統領に就任した場合に現在の6政党によって構成されている内閣を一つにまとめられるだけの力が後任の首相にあるかという疑問である。まとまらなければ総選挙になる可能性が高い。しかし、どの政党も総選挙は避けたいという意向が強い。なぜなら、次期総選挙では下院の定員数がこれまでの630議席から400議席、上院は315議席から200議席にそれぞれ議席が減ることになり、かなりの議員が議員としてのポストを失うことになるからである。