日本経済新聞によれば、日本の大手家電メーカー日立が今年の夏からジョブ型雇用に全面移行するそうです。
ジョブ型雇用とは、図表のように社員の職務範囲を明確化し、専門的な知識を活用するメンバーシップ型と対極の雇用形態です(図表も同紙から)。
日立では、管理職を含めたグループ社員3万人の給与体系も、劇的に変わることになります。
従来の日本企業では、新卒を採用し、終身雇用で年功序列の人事評価。そして、定期的に様々な仕事をローテーションし、ジェネラリストとして社内で経験を積む。これが一般的な雇用形態でした。
しかし、専門的な知識や能力が評価され、優秀な人材は、雇用条件の良い会社に流出するようになりました。大手企業といえども、高い能力に応じた給与体系を導入せざるをえなくなったと言うことです。
ジョブ型雇用になれば、幹部候補生として役職に就いている一部の評価の高い社員以外の中高年社員は、体裁良く給与カットされることになるでしょう。
1つの会社で20年以上、言われるがまま様々な仕事をこなし、専門能力を持たないまま管理職となり、いきなりジョブ型雇用に移行です。40代以上のジェネラリスト社員にとっては、青天の霹靂です。
今更、転職しようと思っても、中高年の転職市場は甘くはありません。専門知識がなければ、キャリアアップすることは難しいのです。
ジョブ型雇用への移行は、日本企業にとっては、遅まきながら好ましい動きと言えるかもしれません。人材獲得競争と生産性向上のためには、必要不可欠な人事制度だからです。
しかし「一流企業」に入って、社内の人事ローテーションを繰り返し、終身雇用で仕事をするという「成功モデル」を信じて真面目に働いてきた人たちには「中高年ハシゴはずし」にしか見えないでしょう。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。