日本ではコロナの水際対策のために海外から帰国する日本人入国者に対して強制隔離を行っている。
日本政府は非常に親切で、この強制隔離の費用を税金で賄っており帰国者の負担はゼロである。
滞在先は都内や横浜の非常に眺めの良いホテルやビジネスホテルの他に最近ではホテルが足りなくなってしまったために、会社の寮であったところや官公庁の施設、 また帰国者が増えた為に航空機で地方に帰国者を移動させて地方の宿舎に滞在するという例も出てきている。
国はこのような強制隔離中のホテルの様子や食事を写真や動画に撮って SNS に投稿することを「お控えください」と チラシに書いて滞在者に手渡しているが、 年末年始にかけて日本に帰国した人々の少なからずはこのような注意を無視して Twitter などにその様子を投稿していた。
あまり豪華とは言えない宿舎やホテルに滞在していた人もいたが、 少なからぬ帰国者は眺めやインテリアが素晴らしいホテルでかなり快適な時間を過ごせたようである。
都内や横浜のホテルだとどうしても狭くなってしまうが、 これは他の先進国の大都市のホテルでも大して変わらない。
またインターネットやテレビも提供され、引きこもるのが大好きな人には素晴らしい環境であったといえるのではないだろうか。
ところが驚くべきことに、滞在者の少なからずはこのような恵まれた環境に文句を言いまくりなのである。
例えば「アパホテル&リゾート 横浜ベイタワー」に滞在したイギリスから帰国したある若者は、到着まで宿泊施設を知らされなかったことや、11平米という部屋のサイズ、アパホテル客室内で見ることができるVOD(ビデオ・オン・デマンド)、提供される食事が冷たいことやアレルギー対応が不十分なことに文句を言い「なぜこんなに惨めな思いをしなければならないのか」ということを散々呟いていた。
ところがこの人が滞在していたイギリスは、感染拡大国から帰国入国する人は、一泊3万円で自費で強制隔離費用を払わなければならなかった。10日間では30万円である。現在は緩和されているが、2021年中はかなりの間実施されていた。
感染拡大国に指定されていた国の殆どは発展途上国だ。
費用は事前にネットで一括で払うようになっており、お金がないとか家族に特別な事情があると言ったことの配慮は一切なしである。
受付はカード払いだけだ。ネットを使えないとかカードがない人への配慮は一切ない。「対応できないお前が悪い」で終了である。事前予約と支払いができていない人間は入国拒否される。
また家族で帰国する場合、子供の費用も全て払わなければならないので、強制隔離の費用だけで家族4人で100万円近くなるという例もあった。
こんな高い費用を払っても提供される食事はその辺の激安カフェのものよりはるかにひどく、ペラペラのトースト2枚に目玉焼きが箱にぶちこまれているいう状況で、イギリス飯の期待を裏切らないものであった。
部屋は日本のビジネスホテルよりもはるかに不潔で古く、ヒーターも微妙で、カビだらけの部屋を提供された人もいた。
まさに紳士による接待である。
ホテルからは一歩も外に出ることができず、入口にはマシンガンを携帯した警備員が見張っている。
このようなホテルから逃げようとした人は逮捕されるのである。 抵抗したら銃殺されても文句はいえない。
また逮捕されるどころか、実名と実顔を全国紙の新聞で掲載されてしまっている。 ホテルや食事に対して文句を言った人も、容赦なく新聞やネットで実名や実顔晒されてイギリス国民から嘲笑されるという状況になっている。
イギリスのメディアというのは非常に恐ろしく、ルールを守らないような人間や、 非常時に制限があるような場合に文句をいうような人間というのは、不届き者として全国にさらすのである。
公平さや騎士道といったものを重視する非常にイギリスらしいやり方であろう。
私が2021年12月に出版した「世界のニュースを日本人は何も知らない3 – 大変革期にやりたい放題の海外事情」という本にも記載しているが、イギリスは非常に実利主義で合理的な国にある。
イギリスは世界の富裕層が集まる金融ビジネスをやっているところで、様々な金儲けの機会や税金を節約する仕組みを提供している。金を儲けたい人間はどうしても入国したい国なのだ。
この国ははっきり言って先進国における合法な賭場と、儲かりまくる合法な闇市を運営するようなところだ。
従って自国民に対しても外国人に対しても塩対応しまくりだ。結局皆入国したいからだ。観光で食べている国でもないので、外国人に対してお客様対応をする必要もない。
そのためコロナでは「感染拡大地域から来るような人間は入国するんじゃない」ということを、高い費用、ひどい食事、ひどい宿舎で遠回しに提示しているのである。しかも強制隔離に必要な費用も自分で払えということで政府の懐も痛まない。
「こんな時に移動するお前が悪い」ということを紳士的に伝えているのだ。
しかしすべて合法であるから政府が批判されることもない。
誠に頭が良く紳士的でスマートなやり方と言えるのではないだろうか。
ところが日本の場合は政府は、本当は海外からやって来る人に「来るんじゃない」ということを言いたいのであるが、 そこはやはり日本人であり、気弱で優しいところがあるので、 来てほしくない人にもお客様対応をしてしまう。
提供する食事には趣味趣向を凝らし、非常に美しく、高級レストラン並みの弁当を提供しているホテルもある。 ネットでホテル名や食事を晒されることを承知しているので、ホテルも仕出し屋も赤字覚悟で質の良い食事を提供しているのだろう。これが全て税金で賄われるというのだから驚くべきことである。
非常時なので従業員を確保するだけでも一苦労に違いない。ホテル側だって風評被害もあるのだから、この仕事を受けるのには相当な覚悟だったはずだ。
感染者と接触する確率も高いのだから、ホテルのスタッフや清掃担当者だって気楽ではない。
イギリスをはじめ中国や香港といった国は、強制隔離がすべて自費で塩対応であるから、日本がいかに例外的かということがよくわかるだろう。
さらに甘やかされた滞在者は、このような無料の食事や素晴らしい滞在先に対して文句を言いまくりなのだ。 文句を言っている人間の中には松居一代氏のような芸能人もいるのだから驚きである。 金があるのだから、自分で払えるのにである。
NYから緊急帰国の松居一代、隔離ホテルの不満連投 「狭すぎ」「弁当はご遠慮しました」
その上入国する人々は家族が危篤とか、仕事でどうしても移動しなければならない、 病気である、家族の介護があるという「特別な事情」がある人ばかりではない。
ただ単に海外旅行をしたい人とか、 どうでもいいような語学留学、 旅行ブロガーなど、「こんな時期に移動するべきではない」人もいるのである。
そういう人々は実に無責任なので、海外で何か所もの都市を転々としたり、大勢の人とパーティーをやったりしている。
実に呆れるが、こういった人々にも日本政府は無料で強制隔離の費用を出しているのだ。
国内の人々が規制や移動を我慢しているのに、なぜ彼らは堂々と遊びで渡航し、日本政府が費用を負担するのか。
日本政府はちょっと優しすぎるのではないだろうか?