最後の20歳成人の成人式:世界から遅れる日本は若者が活躍できる18歳成人時代の構築を

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アスリートや芸能界など一線で活躍する新成人

昨年はコロナ禍ということもあり多くの自治体で成人式が中止になったが、2年ぶり成人式が行われたところも多かったようだ。

成年年齢が、2022年4月から、現行の20歳から18歳に引き下げられるため、20歳成人の中で行われる最後の成人式となった。

今年の新成人といえば、昨年がオリンピックイヤーだったこともあり注目を集めたサッカー日本代表の久保建英さん、NHK朝ドラ女優でもある清原果耶さんと、森七菜さん、こども店長として知られる加藤清史郎さん、共にドラゴンザクラにも出演していた平手友梨奈さん、タレントとしてお馴染みのめるること生見愛瑠さん、スポーツ選手だとフィギュアスケートの本田真凜さん、プロ野球ではロッテの佐々木朗希さんなどがあたる。

あらためてこうして見ると、分野によってはむしろこの世代が中心になっている分野があることがあらためて見えてくる。

今年は、高橋家でも5人兄弟の3人目の長女が成人を迎えた。

新成人は120万人。50年で約半数に

2022年に新成人として成人の日を迎えたのは約120万人。

昨年との比較では4万人の減となった。

総人口に占める新成人の割合は0.96%、2011年に1%を切った後は、ほぼ横ばいながら今後は減少傾向が進み、2025年には0.88%になるとされている。

約50年前の1968年には新成人が236万人(2.35%)いた事を考えると、その人数は半世紀で半減してしまった事が分かる。

第二次ベビーブーム直後の自分の世代でも189万人(1.50%)いた事、さらにはこの第二次ベビーブーム世代が親になってきていながら増加させられていない事を考えると、若者の減少は既に歯止めをかけられない状況になってきている事はあらためて感じさせられる。

こうした中で、是非、将来を担う若者たちには、大人たち以上に長期的視点を持つと同時に、「将来は」ではなく、今から活躍する事を意識してもらいたいと思う。

今年が20歳成人による最後の成人式

「20歳になったら成人」という日本の常識が今年で最後になる。今年4月から「18歳成人」となるためだ。

「18歳成人」については、2018年に書いた『法案成立で2022年から「18歳成人」は何を変えるか』なども参考にしてもらえればと思う。

2015年に選挙権が18歳に引き下げられたことは記憶にある方も多いと思う。この選挙権年齢引き下げは戦後初となる70年ぶりの拡大となり、歴史的にも大きな変革であり、私自身はこの選挙権年齢引き下げを大学生だった2000年から15年もかけて仕掛けて実現した。

国民投票法の付則に明示されていることから、この選挙権年齢の引き下げの後も宿題として残っていたのが成人年齢の引き下げだった。

この辺りについては、2016年に書いた『どこよりも詳しい「18歳成人」解説。被選挙権年齢引き下げにつなげ!』にも書いたように、「18歳成人」や「18歳選挙権」は、第1次安倍政権であった2007年5月に成立した日本国憲法の改正手続に関する法律(以下、国民投票法)がきっかけになっている。その附則第3条第1項の「満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。」と明記されたことから始まった。

詳しくは、著書『子ども白書2016 18歳「成人」社会~「成人」とは何か~』なども読んでもらえればと思うが、私たちの仕込んだこの国民投票法の仕掛によって2015年5月に「18歳選挙権」が実現、今回の「18歳成人」へと繋がった。

さらに宿題として残るのが被選挙権年齢の引き下げ

初の18歳による国政選挙が行われた2016年、自民党では党の政策決定を行う政務調査会に「若年成人の教育・ 育成に関する特命委員会」を設置し、初回会合では、私が有識者として招かれ、成人年齢引き下げに関する課題と同時に、被選挙権年齢引き下げを含めて、若者を当事者として参画させながら育てていく環境整備の重要性などを指摘したことを思い出す。

「18歳選挙権」と、今回の「18歳成人」の実現でもさらに宿題として残るのが、「被選挙権年齢の引き下げ」だ。

世界各国の被選挙権年齢を比較してみると、17歳が1.0%、18歳が33.3%、20歳が0.5%、21歳が29.2%、23歳が2.6%、25歳が28.2%、28歳が0.5%、30歳が  4.6%となっている。

選挙権年齢と異なり、被選挙権は世界の傾向は大きく18歳、21歳、25歳の3つに分かれる。

これは、被選挙権年齢を選挙権年齢と合わせて18歳としている国と、当時21歳が成人年齢の主流であった中で成人年齢と被選挙権年齢を合わせていた国、成人年齢よりさらに高い年齢に被選挙権をおいていた国とに分かれていたためだ。

一方で、ドイツ、フランス、英国、スウェーデンなど欧州諸国は成人年齢引き下げなどのタイミングで軒並み被選挙権年齢は18歳へと引き下げられている。

日本の被選挙権年齢は、国際比較で使われる下院に当たる衆議院議員をはじめ都道府県議会議員、市区町村議員、市区町村長までが25歳、上院に当たる参議院議員と都道府県知事が30歳となっている。

被選挙権年齢も先進国とされるOECD(経済協力開発機構)の加盟国(36カ国)で見ると18歳が21カ国(58.3%)と過半を占める。

先進国は未来に対して当事者となる若者の声に耳を傾けるとともに政治参画を促す方向に制度変更する傾向があり、近年もフランスが2011年に法改正を行い下院の被選挙権年齢を23歳から18歳に、英国も2006年の法改正で21歳から18歳に引き下げている。

先進国で下院の被選挙権年齢が25歳に残る代表的な国には、日本のほか米国や韓国が上げられるが、昨年末、韓国で国会議員選挙と地方選挙に出馬できる年齢制限を現状の25歳から18歳に引き下げる法案が政治改革特別委員会で可決したと報じられた。

与野党合意により受理されたため、司法委員会や本会議でも可決する見込みで、本会議で決まれば、今年3月の大統領選挙と同時に行われる国会議員補欠選挙から18歳以上の若者が立候補できるようになる。

日本においては、30歳未満の国会議員は一人も存在しない。

海外の研究においては、被選挙権年齢が相対的に低い国は、若い政治家の数が多くなる兆候があることも報告されている。

2019年に『【若者の立候補意識調査】被選挙権も18歳に引き下げると、45万人の若者が立候補する』というコラムも書いたが、被選挙権年齢の引き下げによって、立候補をしようという意志のある若者はこの国にもいる。

この国の未来を考えれば、未来により大きな責任を課されるとともに、その当事者となる若者たちに政治の世界においても活躍してもらう環境を創っていくことは、この国の未来にとって非常に大きな価値を生み出すのではないだろうか。

約半数の職業がなくなる時代に勝ち残れる人材になって欲しい

2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授がAIやロボットなどの発展によって10年後になくなる職業を発表して話題になった。

米国での想定だが、そのインパクトは大きかった。

1位:小売店販売員
2位:会計士
3位:一番事務員
4位:セールスマン
5位:一般秘書
6位:飲食カウンター接客係
7位:商店レジ打ち係や切符販売員
8位:箱詰め積み降ろしなどの作業員
9位:帳簿係などの金融取引記録保全員
10位:大型トラック・ローリー車の運転手
11位:コールセンター案内係
12位:乗用車・タクシー・バンの運転手
13位:中央官庁職員など上級公務員
14位:調理人(料理人の下で働く人)
15位:ビル管理人

さらに同時期に野村総研が行った試算では、10〜20年後にAIやロボット等に代替可能性が高い労働人口の割合は日本の場合、英国や米国よりも高く49%もの労働力が代替可能だとされた。

2013年から既に9年となる。

いよいよここで紹介されているような時代に入り始めているということだ。

いみじくもコロナ禍において、DX化が進み、オンラインでの会議や授業が常識となるなど、様々なものの変化が想像以上に加速している。

我が家でも今年、5人兄弟の3人目となる次女も成人を迎えた。

彼女たち世代に自分たちは何が残せるのか、また彼らがこれからの世界で活躍していくためには何が必要なのかと日々考える。

既に私たち親となった世代だけでは解決できないほどこの国の問題は深刻になりつつある。

せめて、彼らの時代には、再び世界のトップが見られるような未来を見据えた環境整備ができればと思う日々だ。

今週、同じように成人を迎えた若者たちが120万人いる。

ことしも大学で教えている教え子や、NPOなどの活動を共に行っている同志も含め、彼らには、「将来」と言わず、「今すぐ」活躍してもらいたいものだと真剣に思う。

何度失敗してもいい。

新たな社会と未来のためにチャレンジをしてもらいたい。

一方で、まだまだ若い人たちに負けてもいられない。

与えられた役割として、自分自身も政治でも経済でもさらに若い世代が世界と戦い、活躍する環境の整備を続けていきたいと思う。

強みとなる人材をさらに長いスパンで養成して行くためにも、どう若者たちが活躍できる社会にしていくかは、非常に重要な要素と言える。

政界、経済界は勿論、あらゆる分野で若者たちが更に活躍できる社会を実現していくためにも、今回の民法改正を単に成人年齢を引き下げただけにする事や、社会における責任だけを重くする事にならないよう、若年成人対策をはじめ、更に若い人材が育ち、活躍できる環境整備を徹底していく必要を強く感じる。