日本の政治についてまず結論から先に述べると、首相には企業または国際組織で活躍している日本人を抜擢しない限り、自民党の政権では日本はこれから後退して行くばかりで成長はないということだ。
自民党政権は終焉を迎えている
今の自民党内には政権を担える政治家はもう尽きている。また野党にも人材はいないように思える。しかも閣僚が交代しても今の官僚組織では同じレールの上に乗るだけで発展も変化も期待できない。
今の日本には改革が必要である。それには政界以外の外部から異なった考えをもった人物を抜擢する必要がある。嘗て、広島カープが赤ヘル軍団に変身したのもルーツという米国人監督を起用したからであった。
しかも、これまで頻繁に首相が交代したのでは国の成長につながる政策は遂行できない。よって発展は期待できないということになる。
日本はこの30年間経済成長していない
例えば、日本の経済成長率GDPを見ると1992年の平成4年から現在まで成長は停滞したままだ。GDPが2-3%の成長率は現状を維持するということであって成長ではない。この30年間に日本は成長していないということだ。それでいて政権を担う政党は一時的に交代はしたが、その大半は自民党が政権を担って来た。
成長が停滞を続けているのに、それでも日本の大半の有権者は自民党に忠実であり続けている。このような現象は恐らく日本だけにしか見られない現象であろう。それは日本人が既成の社会組織に従順で、しかも国家の危機に繋がるような出来事もなく日本が平和過ぎるということなのであろう。
最近から中国の脅威といったことが真剣に取り上げられるようになってはいるが、それが一般市民の危機意識を招くほどではない。貧困者が増えていることにも一般には話題にならない。宗教と道徳の欠如も甚だしく単に物資的に生きている人が多すぎる。米国やヨーロッパで深刻な問題となっている、例えば、不法移民の流入もない。また、ウクライナのようにロシアからの脅威に似たようなことは日本では起きていない。社会的な不平等も殆ど存在しない。しかも、スペインのように失業率が14%という国でもない。
今の日本は経済の成長は停滞しているが、平和に暮らせるということで政権の交代を切実に国民が感じないということなのであろう。
それを反映しているかのように、昨年12月17日付でアゴラに掲載された内藤忍氏の「韓国台湾にも抜かれていく『変われない日本』」という記事がそれを示している。
政治家ではなかったドラギ氏が首相としてイタリアを再生させている
日本と同じような現象がこれまで観察されていたのがイタリアだ。戦後頻繁に首相が代わるイタリアは遂にマッタレッタ大統領が昨年2月、欧州中央銀行の前総裁マリオ・ドラギ氏(74)を首相に起用した。ドラギ氏は戦後のイタリアでなんと67代目の首相だ。因みに、日本の岸田首相は戦後の首相としては24人目だ。
イタリアはこれまで長年政権の不安定を示すかのようにこの25年間にイタリアの一人当たりの所得はEU平均を100とすると、1995年の126から2020年には94まで下降した。また、2014年のGDPは2008年のそれと比較して8%も後退していた。また生産性も10%の後退。その一方で同期間の比較でドイツのGDPは5%、フランスは3%の増加している。(1月11日付「エル・パイス」から引用)。
ところが、昨年ドラギ氏が首相に就任すると超党派で6政党から閣僚に入閣させ、パンデミックでも政府は適切な対処をし、政党間の争いも極減し、国民の間でも政府への信頼を取り戻している。これらの変化はすべてドラギ氏の指導力によるものだと評価されている。
しかも、ドイツのメルケル首相が政界を去ったあとのEUでドラギ氏の存在がクローズアップされている。それを示すかのようにフランスのマクロン大統領はイタリアとの連携を強化する方針を示し、ドイツのショルツ新首相もイタリアを訪問してドラギ首相と会談をもった。
国を成長させるのに大事な安定した政権を持つという意味でこれまでのイタリアと正反対なのがドイツだ。ドイツはショルツ首相は戦後9人目の首相だ。それぞれ首相が長期政権を維持して来たということだ。
筆者が在住しているスペインでも1976年に民主化が始まって以来現在のペドロ・サンチェス首相は7人目だ。スペインで民主化が始まった1976年(昭和51年)から日本は現在の岸田首相まで24人が交代している。
メキシコの80年間の右派政権が終幕、左派政権が国を再生させている
メキシコも80年余り右派の2政党が政権を担って来た。制度的革命党と国民行動党の2党でいずれも右派政党であり、後者は僅か12年間の政権を担当しただけで、残りは前者が政権を担って来た。
ところが、この右派2政党による長期政権で汚職と犯罪が増え、しかも経済にも伸びがないということで、国民は2018年に左派政権を初めて誕生させた。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領である。彼は3度大統領選に挑戦し、3度目でその的を得た。その為に彼自身が新しい政党を創設して大統領選に臨んだ。そして当選。
メキシコは貿易の8割を米国に依存しているということで、また地理的にも北米に位置しているということでメキシコの政治は北米を構成する3か国の一つという意識でいた。ところが、トランプ前大統領がメキシコを人種差別するようになり、メキシコは遂に目が覚めたのか、ラテンアメリカのリーダー国を目指すようになった。それをバックボーンに対米国に臨むという姿勢に変わったのである。
この変化を率先したのがアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領である。そしてメキシコは今、ラテンアメリカのリーダー国として着々とその影響力を広げている。また同大統領の支持率も依然高い率を維持している。
筆者がメキシコの例を取り上げたのは、日本が今も米国にあまりにも依存しているということにもまた変化が必要であることを言及したいからである。
アジアにおける中国の台頭という脅威の前にアジア諸国が日本を頼りにしたいと望んでいる。ところが、今の自民党政権はこれまで米国に依存し、そして今は中国にも媚びようとしているということ。この姿勢を変えて独自の外交を進めて行く必要がある。そのためにも政界以外の分野から新しい人物を首相に起用する必要があるように思える。