自発性を引き出す

「人間力・仕事力を高めるWEB chichi」に昨年10月、『「公私混同は大いにしなさい」ミスター・ラグビー平尾誠二が熱弁した〝強い組織〟の作り方』と題された記事がありました。その中の「自発性をいかに引き出すか」で、平尾さんは次の通り言われています。

僕はチームワークを高めるために、よく逆説的に「自分のためにやれ」と言うんです。結局それが1番チームのためになりますから。みんなに、「公私混同は大いにしなさい」とも言うんです。これは、一般的な意味での公私混同ではなく、公のことを自分のことのように真剣に考えるという意味です。個人がチームのことを自分のことのように考えていなければ、チームはよくならない。

此の内「公のことを自分のことのように真剣に考える」は、良いと思います。しかし公私混同という言葉は、余りにも違う概念で適切な使い方だとは思えません。之は一言、世のため人のため、と言えば済む話であり、そのため大いに研鑽し、そして社会に対しても大いに物を言える存在になりなさい、ということではないでしょうか。

私自身は、嘗て御紹介した「私が考える君子の六つの条件」に反するような行いをしていないかと何時も反省しながら、一歩でも君子に近づけるよう真摯に努力し、日々研鑽を積み重ねているつもりです。ここに改めて、その六点を記しておきます――①徳性を高める/②私利私欲を捨て、道義を重んじる/③常に人を愛し、人を敬する心を持つ/④信を貫き、行動を重んじる/⑤世のため人のために大きな志を抱く/⑥世の毀誉褒貶を意に介さず、不断の努力を続ける。

それから上記引用の後平尾さんはまた、「自分の中から持ち上がってくる力」を自発性とされ、「これをうまく引き出すことが、これからチームの指導者には必要」であると言われています。

人間、自分という人物を築くのは自分自身でしかないわけですから、全てはある意味自発性が出発点でしょう。例えば、水飲み場にまで馬を連れて行ったとしても、飲むか飲まないかは馬の判断次第なのです。私は、そういう中で部下の自発性を引き出す為にすべきは、様々な事柄にチャレンジさせることだと考えています。そして、部下の興味の所在を探るとか適性を見極めて行くのが、上司というものだと思っています。上司たる者の指導次第で、部下は自発性を発揮して動いて行くものです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。