法律から通知まで、公的文書の種類と違いを理解する

法律、政令、省令、告示、通知、ガイドライン、検討会報告書、、、たくさんの文書が役所から公表されています。実は、規制などのルールは法律だけでなく、このようなたくさんの文書がその根拠となっています。それぞれは官僚の人たちにとっては明確に位置付けが違うものですが、一般の人たちにとっては、複雑でその違いは分かりにくいのではないでしょうか。

法律は確かに守らなければいけないものだという認識は皆さん持っているようですが、省令は?通知は?と細かい部分になるにつれて、一般の人たちだけでなく、政策に関わる仕事をしている民間の方でもその位置づけを正確に理解している人は少なくなっていくようにかんじます。

MasaoTaira/iStock

時には、皆さんの団体のビジョンや方向性と規制などのルールが合わない場合もあるでしょう。もし、規制の内容を確認したり、変えるための働きかけをしたりしようと思っても、どの文書を変えてほしいのか、それが明らかにならないと中々話が進みません。

法律を変えるとなると時間もかかりますし、関係者も多く大変ですが、実は法律より下に位置付けられた細かいルール(文書)を改正すればよいことも多いのです。役所の複雑な文書の違いを理解していないと、ルールも政策につかめませんし、ルールやその運用変えてほしい時にもどのように対応すればよいのか、迷ってしまうでしょう。

また、役所にはたくさんの会議があります。審議会、検討会等の名前を冠した報告書もたくさん世の中に出回っていますが、どの検討会の結論が制度改正に直結し、あるいはそうでないかの判断を付けられずに困っている、という話もよく耳にします。

そんな皆さんが抱える公的文書に関する疑問について、皆さんと一緒に考えていきます。

法律、政令、省令、通知…たくさんある文書はどう違う?

まずは基本的なところからおさらいしていきましょう。

法律は、国会で議決されたものをいいます。意思決定のプロセスは一番長くて複雑な文書です。 担当者が起案し、官僚トップの事務次官、大臣などの省庁内の政治家の了解を得た後、全閣僚からなる内閣の合意をえます。そうして政府案として取りまとめられたものが国会で議論され、国会議員の半分以上が賛成すると、法律になるわけです(多くのルールが定められる内閣提出法案の場合 )。

政令は、法律で「細かいところは政令で書きます(※)」と示された部分について定めます。国会の議決は 不要です。担当者が起案後、内閣で合意を得ることで規範(ルール)とすることができます。
※実際は「○○として政令で定めるものに限る」等といった記載がされます。

省令・府令の場合は、法律や政令で「細かい部分は省令で書きます」とされた部分について定めます。更に手続きが簡素化され、国会の議論、内閣の合意が不要です。大臣が了解したものが規範になります。

ここまでが、一般的に法令と呼ばれるルールですが、

法律、政令、省令の内容をわかりやすくしたものやその解釈や運用をつたえるもの、広くお知らせをする必要があるときなどに、通知・事務連絡等が使われることがありますが、これらは法律とは区別されています。

通知などの意思決定者のレベル(文書の名義人)は課長から大臣まで幅が広く、その意思決定権者に応じて、課長通知、局長通知等と呼ばれています。

その通知がどの意思決定者によって発出されたかはその文書の右側を見ればわかります。

例をあげます。

画像1を拡大表示

この通知は右側に「厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長」と書いてあります。つまり、課長の権限に基づいてこの通知を出したということになります。

一般的には、法律→政令→省令→通知の順に、その内容が検討され、発出されます。

その改正にかかる手続きコストも同様に法律→政令→省令→通知の順に、低くなっています。

メルマガでも同様の内容を配信しています。

この続きをみるには この記事が含まれているマガジンを購読する


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。