コロナ対策、本当に「換気」だけで大丈夫? --- 森友 由

中国の武漢市で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発見されてから、実に2年以上が経過した。当時の私たちは、世界が初めて経験するパンデミックに戦々恐々とし、対応も手探りであったと言えよう。

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2年後のいま、この未だに手探りな状態を、誰が予想し得ただろうか。医療ひっ迫を防ぎ、自宅で亡くなる国民を減らすべく、新型コロナウイルスの扱いを指定感染症2類相当から5類へ引き下げる案は、内科医でもある日本維新の会の梅村聡議員などが1年ほど前から国会で提案している。

オミクロン株が主体となってからは、安倍元総理を初め、オピニオンリーダーたちやメディアも5類への引き下げに言及するようになってきたが、未だに2類相当のままである。

周りで陽性になった人は、保健所に連絡をしても、自宅待機を命ぜられるだけで入院先は確保されず、かかったクリニックも風邪薬しか処方しなかった。当時の新型コロナウイルスは風邪の症状が悪化することが怖いのではなく、体内でサイトカインストームが起きることこそが怖かったのである。薬もなく、医者もいない環境で、ただただ容態が急変する不安と孤独に向き合うだけであった。

医療体制もさることながら、当時とほとんど変わっていないものがある。感染症対策である。未だに三密回避、マスク、手洗いだけである。それでも感染が収まらなければ、科学的な検証をすることもなく、緊急事態宣言や蔓延防止措置などによる行動規制を強いる。

WHOやCDCなども昨年ごろからエアロゾル感染(空気感染)の可能性を示唆しているが、エアロゾル感染対策は当時も、そして今も、「換気」だけである。しかし、窓を開けても、ちょうど良い風が吹き込むとは限らない。真夏や真冬の時期は、窓を開けることさえ困難な地域が多くあり、高層マンションや地下街などそもそも窓がない部屋もあろう。そのような場合は、「換気」を強制的に行う「空調」に頼るしかない。

日本の空調設備機器市場シェアの大半を占めるM社とD社の2社と直接話す機会があったが、十分な換気を実現するには、「吸気」と「排気」をバランスよく行わなければならないとのことだった。自動的に吸気と排気を行うことを「計画換気」と呼ぶらしいが、そのような機能が備わった最新の空調設備を導入しているビルは都心の超高層ビルくらいで、殆どのビルや施設にはそのような機能が備わっていない。また、仮に計画換気機能を導入していたとしても、性能を維持するためには定期的な掃除・メンテナンスが必須である。

ビルオーナーの皆さんはドキッとした人も多いと思うが、定期的にメンテができていないビルや施設は山ほどあるだろう。フィルターが埃などで目詰まりを起こしていたら、バランスどころか、スイッチが入っているだけで、吸気と排気自体が行われていないことも考えられる。

つまり、「吸気」と「排気」のバランスが取れているビルや施設は殆どないと考えてよい。それゆえに、クラスターが発生するのではないだろうか。ダイヤモンドプリンセス号を思い出して欲しい。物理的に感染者と非感染者は分けていた筈だ。それなのに、感染が相次いでしまった。スーパーコンピューターの富岳などを用いてぜひ検証をしてみてもらいたいと思うが、空調にこそ問題があったのではないだろうか。これは仮定だが、空調のスイッチを入れることで、船舶内の汚染された空気を外に排出しているような気になるが、実際には吸気と排気のバランスが崩れていることから、十分な排出はできておらず、むしろ船舶内に汚染された空気を循環させてしまったのではないだろうか。

当時、接触感染と飛沫感染にはかなり神経を使っていたはずだ。物理的に部屋を分け、注意を怠っていなかったのに、なぜあれだけ感染が広まったのか。空調、もっと言えば、ダクトを通じた感染ではなかったのか。いま、同じような原理でエアロゾル感染の可能性があるのであれば、「換気」や「空調」だけでは不十分である。空気中に存在するウイルスを能動的に減らす「空間除菌」が必要である。

人体に安全とされる次亜塩素酸水を空間に噴霧する手法は10年以上も前から介護施設や幼稚園などで行われてきた。COVID-19に対しても、当時は活用の広がりを見せたが、一部の「専門家」などがメディアを通じて待ったをかけた。言い分は「有効ではない」「人体に有害だ」である。

しかし、本人たちにその根拠を直接聞いてみると、科学的なものは一切なく、他の誰かから伝え聞いた聞きかじり情報か、WHOガイダンスに「消毒剤の噴霧は推奨しない」というような表現があるから、などであった。まるで人体に有害な「次亜塩素酸ナトリウム」と混同してしまっているかのようであった。

次亜塩素酸水を噴霧している様子

逆に、「有効である」「安全である」と主張する科学者やメーカーは科学的である。次亜塩素酸水を噴霧すると、揮発した次亜塩素酸成分が空気中に漂う。この揮発した次亜塩素酸が新型コロナウイルスに有効であることは、2022年1月にパナソニック社がプレスリリースで発表している。医薬品大手のニプロ社の発表によると、屋内プールの空気中の塩素濃度と同等以下で、ウイルスに対して有効であることが分かってきている。実際にヒトを用いた臨床試験も行われ、安全性が確認されている。

つまりは濃度管理をすれば、ウイルスには有効だが、人体への害は無い。次亜塩素酸水以外にも、我が国にはエアロゾル感染対策に活用できる技術と資材がある。どれも使用方法等をよく理解した上で活用しなければならないが、光触媒、紫外線、オゾンなどが挙げられよう。

次亜塩素酸水を使って実際にSARS-CoV-2の不活化試験を行った元WHO職員・北海道大学の玉城英彦名誉教授が、古巣のWHO宛てに問い合わせをしたところ、WHOガイダンス内の「消毒剤」に「次亜塩素酸水」は含まれていないという正式回答を受け取った。全国放送のテレビ番組で「人体に有害だ」と発言した「専門家」も、その発言を後に撤回している。

厚労省などが発出していた次亜塩素酸水に関するポスターと呼ばれる資料からも、空間噴霧に関する注意事項は削除された。今では「使用上の注意事項等を守って適切に使用することを妨げるものではありません」と事務連絡で通達している。

三省連名資料の修正前と修正後

一般的な家電製品などと同じように、使用上の注意を守ればいいということになったのである。

国は、いつまでも昔ながらのやり方だけに頼るのではなく、そろそろ科学に目を向けた対策を取り入れるべきではないだろうか。そして我々国民は、メディアや「専門家」に惑わされない、冷静な視点を心がけたい。感染症対策に我が国の技術と資材が活用されていくことを期待したい。

森友 由
1983年生まれ。青山学院大学卒(国際政治経済学部)、在学中に米国ワシントン大学に交換留学。1854年創業の老舗卸売業、森友通商株式会社(東京・中央区)の七代目・代表取締役社長。昨今は日本除菌連合の副会長として、国会議員約50名による超党派議員連盟「感染対策を資材と方法から考える会(代表・片山さつき)」と連携し、科学に基づいた感染症対策を推進する活動を行っている。