子どもの貧困対策 --- 徳永 由美子

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2019年に改正子どもの貧困対策法が成立し、都道府県のみならず、市区町村にも子どもの貧困対策推進計画の策定が努力義務となったことを受け、佐倉市でも子どもの生活状況実態調査が行われ、1年かけて計画を策定していく予定です。

すでに千葉県が県内の15市町村を対象として実態調査を行っており、おそらく佐倉市でも類似的な結果が想定さることから、所感を述べつつあるべき子どもの貧困対策について考えていきたいと思います。

まず令和2~6年度千葉県子どもの貧困対策推進計画には、施策横断的な方針として以下の3つが挙げられています。

  1. 親の妊娠・出産期から子どもの社会的自立までの切れ目のない支援
  2. 支援が届かない、又は届きにくい子ども・家庭への支援
  3. 地方公共団体による取組の充実

特に目新しいものはありません。

行政側が用意している施策は一見連続性があるように見えますが、ぶつ切りの事業を横軸に並べているだけで途切れています。

その最たるものが幼児期から就学時の移行時期、つまり市長部局の子ども支援から教育委員会への移行時期です。そして義務教育終了後から高校進学した生徒でも市教委から県教委に代わります。相談先として、保健師 → 幼保の先生 → 小中学校の先生 → 高校は義務教育ではないので中退も止めることはできません。でも中退するという事は問題があるということです。地域資源と繋がっていないまま中退すれば支援の情報からは遠ざかってしまいます。

これからは「事業」の視点ではなく「支援者」の継続性という視点で切れ目のないサポートを考えていく必要があるのではないでしょうか。心を開いて積み重なった問題を解きほどいていくためには自分の事を理解してくれると思える良好な人間関係が必要です。

具体的に申し上げると、佐倉市内では5つの団体が8ヶ所で学習支援活動を行っていますが、必要な児童生徒に情報が届いているとは言えません。学校が学習支援が必要と思われる児童生徒を把握していても、「特定の子にだけ勧めることができない」ため、児童家庭課が把握している子にだけ勧められているといった状況でしょうか。

「官民連携」という言葉を最近はよく耳にしますが、「学校と民間の連携」はまだまだ難しい現状です。

そして保育園や幼稚園、学校が保護者の相談先となることは多いが、生活困窮など内容が深刻なほど先生に相談するには抵抗があるのではないかと思います。先生の次にではないですが、スクールカウンセラーやSSWには相談したかったが抵抗感があったという結果が特徴的です。SSWは福祉との窓口でもありますから、ここの抵抗感は取り除く必要があります。ただ初対面の人にいろんな要因が積み重なってきている問題について一から相談するのは大変です。

私は妊娠した時の面談から担当保健師をつけることを提案しています。同じ担当だからこそ話しやすい局面が必ずくると思います。乳幼児期にハイリスクの方には頻繁なコンタクトが必要ですが、就学して子育ての悩みから経済的な悩みなどに移行していく場合は担当保健師が同席してSSWに引き継ぐなどして良好な関係作りをサポートすることも大事ではないでしょうか。

今まで支援の網から漏れている、また受けられる制度の要件を満たしているのに支援が届いていない家庭を見落とさないためには、逆にこども支援部、健康推進部、福祉部、教育委員会などが保有している子どもの情報をデータベース化して一元管理すれば、新たな救済につながるのではないかと思います。

しかし自治体レベルでは所属ごとに保有する個人情報の外部提供については、本人同意を原則とするなど情報提供に一定の制限があることから、現状においては課題があります。そのため国で子どもの貧困等の対策として検討を進めている関連情報の一元化と市町村間の情報共有について早急に進めていかなければなりません。

そしてマイナンバーの活用です。マイナンバーの個人情報は支援のために活用するものです。プッシュ型で個人にあった情報を必ず届ける仕組みを作るべきです。子ども自身に対してもです。必要なのに支援を拒む方もいらっしゃいますよね。そこは人的なアウトリーチが必要です。

また、小中学生には必ず民間のサードプレイスを地域に作ること。学習支援、子ども食堂、プレイパーク、こどものための活動をしているNPOなど。高校には居場所カフェ。居場所カフェにスクールソーシャルワーカーがいると理想的です。小学校区を基本に歩いて行ける範囲に居場所を作る。高齢者の居場所づくりと合同でもいいでしょう。週1回自治会館を中高生に開放するといったことでもいいと思います。中高生が来てくれたら、その子たちが居心地のいい場所にしていけばいいのです。

すでに取り組まなければならない課題は見えているのです。行政のマンパワーを計画づくりにばかり割くのではなく、次年度に具体的なアクションを起こしながら、改善を重ねた貧困対策になることを望みます。

徳永 由美子 佐倉市議会議員(自民党)
子ども・子育ての活動などを経て現在2期目のNPO系市議会議員。医療的ケア児や発達障害・学習障害などにも積極的に取り組む。