1月7日、アルゼンチンはワクチン外交のおかげで、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の今年の議長国に就任した。
ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体とは
CELACは米国の影響力が強い米州機構(OAS)に対抗してOASから米国とカナダを除く33ヶ国によって構成され、ラテンアメリカの団結と発展を目指す組織だ。
南北アメリカには1951年設立の米州機構(OAS)と称して米国を主導とする35ヶ国が集まっての国際機関が存在している。その一方で米州機構が反共主義の色合いが強いとして、2011年に米国からの支配に対抗する意味でOASの加盟諸国から米国とカナダを除いた33ヶ国が集まってCELACが誕生したというわけだ。
米州機構に対抗する意識が鮮明になったラテンアメリカ・カリブ諸国共同体
ベネズエラのチャベス前大統領はCELACを介して反米組織に育てあげようとした。ところが、チャベス氏が亡くなり、アルゼンチンブラジルから左派政権が終幕を迎えるとCELACはリーダーの不在で低迷していた。ところが、メキシコに2018年、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が登場すると米国の影響力の強いOASに対抗してCELACの活動を活発化する姿勢を取るようになった。
またロペス・オブラドール大統領はラテンアメリカにおけるリーダーとなり、また米国に対抗する意味でもCELACの活動の復活化が必要だと判断した。その決定打となったのは、OASのコロナワクチンでの加盟国への配給に均一性を欠き、またボリビアの大統領選でエボ・モラレス氏の再選が違法だとして国内が暴動化しモラレス氏の出国を導くようになった。この背後には米国の影響力の強いOAS動いていたとしてメキシコはOASから距離を置く姿勢を強く表明するようになったのである。
そして昨年の議長国であったメキシコは今年の議長国としてアルゼンチンが選ばれ鵜ことを望んだのである。その為にアルゼンチンが議長国に選出されるためにメキシコは活発な外交を展開した。
そこで一つ障害があった。カリブ海の小国でベネズエラ、キューバ、ニカラグアなどから支持を集めていたセントビンセント・グレナディーンも議長国として立候補する意向を示していたからである。アルゼンチンが議長国として選ばれるのはほぼ確実だとされてはいるが、加盟国33ヶ国の満場一致で選ばれることを望んでいた。
またその一方で、米国との関係悪化を望まない加盟国に対してもアルゼンチンが議長国に選ばれるための策もメキシコは練らねばならなかった。
ワクチン外交でアルゼンチンは議長国に就任
そこでメキシコはアルゼンチンと協力して1万1000ドーズをカリブ海諸国に配給し、さらにセントルシアに1万8000ドーズ、ドミニカに2000ドーズそしてグレナダに1万1000ドーズをそれぞれ配給してアルゼンチンを議長国にすることに支持票を投入することを約束させたのである。
また米国との関係の悪化を望まない加盟国の為にOASのアルマグロ事務総長の継続を約束したのである。
その結果、アルゼンチンは棄権した極右ボルソナロ大統領のブラジル以外は満場一致で議長国として選任されたのである。議長国に選ばれたアルゼンチンのカフィエロ外相(前首相)はその席を利用してマルビーナス島(フォークラド島)のことに触れ、アルゼンチンの領土であることにも付言した。(1月7日付「ラ・ガセタ」から引用)。
今年はチリも左派政権が誕生することになり、またブラジルもルラ元大統領が政権に復帰する可能性が高い。更に、これまで右派政権のコロンビアまでもが左派政権の誕生する可能性が非常に高いということで、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は広範囲にCELACを活性化させることができると考えているようだ。
多くの問題を抱える国ではあるが、この立ち回りや戦力性を岸田首相も見習うべきであろう。