最近頻繁にジョブ型雇用という言葉を耳にします。ジョブ型雇用とは、野村総合研究所の以下のWEBページによると、
本来は「ジョブ型雇用システム」の意。日本型雇用システムについて論じるために作られた理論モデル。組織各階層における外部労働市場からの人材調達や人材配置、人材の職種別・企業横断的労働市場における転職を伴うキャリア形成等を特徴とする。
とのことで、僕はオーストラリアでこの23年間、その「ジョブ型雇用システム」で仕事をしてきました。特に、ポスドクで移住直後の1999年から教授となってテニュア(定年退職なしの永久就職)になる2018年までの約20年間は、長い時で3年契約、短い時で1年の契約です。毎年KPIが決まっていて、契約期間が終わると基本的に失職します。
でも、同じ学部内、大学内、そして他の大学などで、自分の実力レベルに見合う求人は常にあって、それに応募することを繰り返していきます。今は永久就職していますが、日本で働いていた時と違って、同僚の教授たちも、転職したり、クビになったりもしています。それだけ仕事の流動性が高く、自分に値札がついて、どこかにその値札に見合った職があるように思います。
日本の場合、正社員は解雇されにくく、逆に非正規雇用の方々は契約更新をしないという方法で簡単に解雇されてしまうシステムのように思います。そして、流動性が乏しいようです。
そんな中で数社の企業がジョブ型雇用を試みても、社会全体が一気にジョブ型にしないと流動性も出ないし、非正規雇用の方々にもチャンスは回ってこないような気もします。
解雇規制が緩和されて、金銭解雇が頻繁に起こるようになって、そして全員が正社員(というか、全員同じシステムでの雇用)になれば、流動性もでてくると思いますが、現在の正社員の方にはジョブ型雇用へ移行のメリットがなさそうなので、制度を変えるのは相当難しそうに思えてなりません。
実力があるのに、非正規雇用で憤っている若い方は、ジョブ型雇用の欧米の企業への就職がその解決方法かもしれません。
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動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。