韓国は日本の重要な安全保障のパートナーたりうるか

1か月後に迫る韓国の大統領選挙においては保守と左派をそれぞれ代表する候補者の一騎打ちになる。政権交代の可能性も高まっている。そのような中、とある番組で「韓国は日本の重要な安全保障のパートナー足りうるか」という質問を受ける。なので、改めて頭の整理をしてみる。

文在寅大統領 Wkipedia Oleksii Liskonih/iStock

この質問に答えるにはいくつかのレベルを分けた整理が必要だ。まず、現状について端的に言えば、残念ながら、ムンジェイン政権下の韓国は日本の「重要な安全保障パートナー」とはいえない。国家間の信頼関係が欠けているからだ。旭日旗、レーダー照射事件以来で軍当局間の関係も正常な状況にはない。

しかし、韓国が「日本の安全保障の重要なパートナー」と呼べる状況になる方が日本にとって良いのか、ということについていえば、その方が良いにきまっている。なぜなら、韓国は、日本にとって死活的に重要な地政学的位置にあるからだ。日本の長い歴史の中で、日本が海を挟んで近接する(福岡と釜山は200キロしか離れていない。高速フェリーで3時間)朝鮮半島の南部分が敵対勢力でないことを確保することが最重要課題であった。脅威は常に朝鮮半島からやってきたからだ。

今は飛行機、宇宙、サイバーの時代だから、脅威は遠くからも近くからも目に見えないところからも来るので状況は同じではない。とはいえ、地理は重要であり、韓国が敵国でないことは日本の安全保障上確保すべきボトムラインである。だからこそ、白村江の戦い(633年)も日清戦争(1894-5年)も日ロ戦争(1904-5年)も朝鮮半島の「独立」(適性勢力の手に落ちないこと)のために戦ったのだ。

現在、韓米同盟はこれを担保してくれている。日米同盟と米韓同盟が存在する限り、韓国は日本の敵国ではなく友好国として存在する。韓国から日本にミサイルが飛んでくることはあり得ないし、むしろ、米国との同盟関係を仲介に本来日本にとっても安全保障のパートナーとなりうる枠組み設定にあるのだ。そして、同じ観点から、韓国が自由な民主主義国であることは日本にとって良いことである。

さて、それでは、現実的に韓国は日本の安全保障パートナーとなることは可能なのか、について考えてみる。

同盟や安全保障上のパートナーシップが成り立つためには共通の脅威(課題)が重要であるが、実は、日韓の間にも共通の課題は設定可能だ。北朝鮮と中国の安全保障上の脅威に対処するという共通の戦略的利益が日韓には共有できれば。

しかし、北朝鮮については、政権によってアプローチが異なる。中国についても政権によってアプローチが異なりうる。文在寅政権は、北朝鮮は脅威と考えておらず、米韓同盟がありながら、中国と米国の間も等距離外交的なバランス外交に終始していた。だから、仮に歴史問題がなかったとしても、脅威認識の共有が難しく、日本として「文在寅の韓国」は安全保障の重要パートナーとするのは難しかっただろう。

そして、とても残念なことだが、韓国が真に日本にとって重要な安全保障パートナーとなることを妨げているのは歴史問題である。

韓国が歴史問題をプレイアップして日韓関係が悪化すれば、それは安全保障協力にも当然跳ね返ってくる。韓国という国は、自分で自国の独立を勝ち取っていないという事実を克服しない限り反日とならざるを得ない。だから歴史問題の克服は難しい。でもいつか変わってくれたらとも思う。次期大統領が誰になろうとも、歴史問題に拘泥して現実を見据えた外交安全保障から目を背けないでもらいたい。

もう一つ韓国が忘れている(ように見える)のが、仮に北朝鮮との間の有事が生じて、在日米軍が韓国に出動するといった事態になった場合には日本の同意が必要だということである。韓国の側にも日本が安全保障パートナーであった方が良い理由はあるのだ。

シーレーン防衛という観点でいえば、日韓ともマラッカ海峡、南シナ海、東シナ海を通るシーレーンにエネルギーはじめ輸入を頼っているのだから、共通利益といえる。その意味では、「台湾海峡の平和と安定」」は韓国にとっても重要なはずであり、米韓同盟共同宣言にも言及されたのも当然ともいえる。

こうして改めて考えてみると、日韓が安全保障上のパートナー足りうるかということについていえば、韓国の政権の対中政策(韓米同盟をどこまで重視するか)、対北政策、歴史問題など韓国の政権の姿勢次第ということになる。

とはいえ、政権によってころころ変わるのであれば、日本が韓国を「安全保障の重要なパートナー」として当てにするのは間違っているのだろう。他方で、韓国がどんな政権になろうとも韓米同盟の存在は日本にとって最低限のボトムラインは確保してくれている。また、韓国が自由ない民主主義国であることは強権的な国の並ぶ東アジアにおいて日韓が共通の基盤を持つという意味で重要なことだ。

日本としては、過度な期待値を持つことなく、しかし、日米韓協力の重要性、日韓関係の重要性を常に当該政権に対しリマインドしつつ現実的に対処していくことしかない。

同時に、韓国大統領が米韓同盟重視で、対中脅威認識を共有し、対北対策を共有できれば、日本にとって韓国は(歴史問題を管理できれば)良きパートナーとなる可能性も十分ある。次期大統領がそうであることを期待し日本との関係改善に積極的に取り組むことを願う。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2021年2月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。