またもお座なりの内部調査
テレビ朝日の亀山慶二社長が突然、辞任したと発表されました。巨額とはいえない経費の私的流用、社用車の私的使用などが解任の理由です。社会倫理を訴える報道機関で起きた不祥事に「何これ」と絶句します。
新聞、テレビの報道はほとんど同じ内容で、テレ朝が発表した広報資料をなぞってしか書いていません。何度、読んでも「この程度の不正行為で、テレビの社長の首が飛ぶ本当の理由は何か」と、私は驚きます。
私の率直な疑問は、「私的使用に60万円、私的な贈答品に5万円、社用車の私的利用などだけで解任できるのか」、「昨年11月の私的流用などしか明らかにしていないのはおかしい」「発表文をホームページに載せただけて、記者会見もしない。報道機関として失格だ」などです。
テレ朝クラスの社長ともなれば、関連会社の役員報酬を含め、年収は軽く1億円は超えている。政治家などは、不正がばれると返金、返済して幕引きです。亀山氏も簡単に返済できる金額なのに、そうした解決方法をとらなかったか。理由が分からない不思議な辞任です。
大企業のトップとなれば、交友、交際範囲も広く、公的、私的の境界線があいまいです。社用車を使った私的な外出を問題視する企業はそうないでしょう。私的なゴルフに車を使っても、目くじらを立てるほどのことはない。「同程度のことは多くの社長がやっている」と思います。
ただし、「勤務時間中に私的な外出を繰り返していた」(朝日新聞)の「勤務時間中」というのは、なんのことなのかと思います。何をしていたかです。スキャンダルめいた話でもあれば、そちらのほうが問題です。
「昨年11月に業務外の会食、ゴルフなどの費用60万円」と、テレ朝は指摘しています。なぜ「11月」の分だけ指摘したのか。社長になったのは2019年、常務(スポーツ局担当)になったのが14年ですから、同じようなことを以前からしていたと想像はできる。なぜ全容を解明しないのか。
亀山氏はスポーツ局総括なのに、「スポーツ局長との意思疎通を欠き、局内の指揮命令系統に混乱を招いた」そうです。これが解任の本当の理由かもしれない。テレビ局、それもスポーツやイベント担当になると、一筋縄で経営はできず、内部の統制は簡単ではありません。
凄まじい内部対立、抗争があり、それが亀山氏を社長辞任に追い込んだのでしょうか。スポーツ局長側にも、責任はなかったのかとも思います。それを放置しておいていた早河洋会長にも責任はないのか。
それにしても、主要テレビ局の社長が辞任・解任され、記者会見もせず、ホームページに極めて不十分な発表文を載せただけという行為には、絶句します。不祥事の度に、謝罪するトップの姿を大々的に放映する報道機関が自分のことになると、発表文1枚で済ますというのは解せない。
日産のゴーン会長(役員報酬の偽装などの背任)、関西電力の歴代トップ(金品受領)、三菱電機社長(検査不正)、神戸製鋼社長 (データ改ざん)など、不祥事、辞任・解任は後を絶ちません。
それでも全容がほぼ解明されて、トップ交代となっています。今回のテレ朝問題は、「視聴者の信頼を裏切らないように襟をただしていきたいと思います」(昨夜の報道ステーション)で済ませてはなりません。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。