飲食店経営の楽しさと大変さ

私が10年以上前にマネックスで仕事をしていた時、部下だった女性が女将をやっている池尻大橋のお店に出かけていきました。

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マネックスの後も金融機関で仕事をし、その後は何と新潟の酒蔵に転職。そこで日本酒を極めて、今はこだわりの日本酒のお店でカウンターに立つという異色の経歴です。

普段は、コース料理とペアリングのみの営業ですが、この三連休はトライアルで昼飲み営業しており、単品注文も可能です。

中でも、この日注文した鰆の山椒塩麹漬けの焼き魚は、肉厚な魚がふっくらと仕上がり、合わせてくれたおすすめの日本酒にドンピシャでした(写真)。

飲食店経営とは、憧れてやりたがる人が多い仕事です。私もSHINOBY’S BAR 銀座という飲食店を7年間経営しているので、時々飲食店開業の相談を受けます。まずは「やめておいた方が良い」とアドバイスするようにしています。

自分の好きなものをお客さんに提供し、そのフィードバックがダイレクトに返ってくる。食事やお酒が好きな人にとっては、自分の理想のお店を持つというのは、夢なのかも知れません。

しかし、飲食店経営とは極めて競争が激しく、生きる残るのが難しい業態です。

お客さんは気まぐれですから、安定して売り上げに貢献してくれるとは限りません。一方で、家賃や設備などの固定費が毎日かかり、食材の在庫管理を行う必要があります。

収入が不安定なのに、支出は着実にかかるという構造的に難しいビジネスモデルなのです。

また、幅広い顧客層を対象にするとお店の特徴が出なくなり、大手のチェーン店にコスト面で勝つことができません。

逆に、あまりにマニアックなお店のコンセプトだと、今度は客層が絞り込まれすぎて、十分な集客ができなくなってしまう。

東京には無数の飲食店が存在しますから、その中でどうやって差別化をしていくか。高度なマーケティングのセンスが問われます。

こちらのお店は、日本酒の豊富な品揃えと、それぞれの日本酒に合う美味しいお料理と言うコンセプトでファンのお客さんを集めています。口コミで知名度が上がって、コース以外の提供をすれば、さらに幅広い人を集められ、人気店になる予感がしました。

かつての部下が、まったく違ったフィールドで生き生きと働いている姿を見ると、今の仕事がまさに天職のようで何だか嬉しく、お昼からお酒が進みました。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。