国会オンライン審議を阻む壁

istock-tonko/iStock

国会オンライン審議の必要性

私は、危機管理、業務効率化そして共生社会の3点からオンラインを活用した議会開催を選択できる環境整備が必要であると考えております。

一つ目の視点である危機管理では、新型コロナウイルスの流行により、人との接触という最も基本的な活動が大きく制限されることになりました。業務を継続するためには、テレワークなど、人と人との接触機会を軽減するとともに3つの密を防ぐ場所にとらわれない働き方が重要です。

私たちは、国民の生命・財産を扱う立法や行政の職務を預かっており、業務を止めることはできませんので、政治・行政のデジタル変革を通じた、業務継続性を担保すべきであると考えます。

また、二つ目の視点である業務効率化では、実際の移動や紙を伴う業務は、時として大きな非効率を生み政治・行政に関わる者の生産性の低下を招いていますので、これらを効率化するべきと考えています。

そして、三つ目の視点である共生社会では、我が国も批准している障害者権利条約において、情報通信技術を活用し、障害者に対し、あらゆる社会参画の機会を保障することがうたわれています。また女性議員が出産を行う時などに議決権を行使できる環境を整えることは、多様な社会づくりという観点からもこれからの時代には必要不可欠であると考え、衆議院予算委員会でも同僚の国会議員に理解を促しました。

国会オンライン審議に関する世界の潮流と日本の議論

そうした中、日本で国会を開催することに関しては、憲法56条に定められた(両議院)「総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と定められており、「出席」の解釈については議論があるところでありますが、少なくともG7諸国の中で、オンライン審議や審査が行われた際に、憲法が改正された事例は一つもありません。

G7以外の参考でも、例えばスペインでは議場にいなくても出席、議案採決に対する投票が認められています。スペインの憲法は、日本の憲法の規定に類似しており、「議会での議決には、出席議員の過半数の賛成が必要」と書かれていますが、下院規則で「議院理事部によって投票に参加することが明確に認められた議員は、たとえ議場に現在していなくとも、出席しているものとみなされる」とされており、憲法に書かれた「出席」の意味を、幅広く解釈しています。

私としては、日本においても、関係条文をオンライン国会の開催に対応できるように整えるべきであると考えております。

我が党の奥野総一郎議員も憲法審査会で述べていますが、憲法改正が実現しなければ、オンライン審議・審査ができないといったようなハードルをあげて、実現を難しくするような議論ではなく、有事においては、目の前にある課題を適切に改善していく建設的な議論を各党各会派で行うべきです。

国会オンライン審議を進めるにあたっての健全な国会改革

新型コロナウイルスの感染拡大がこれだけ多くなっている中、国会でクラスターなどが発生した時にも、国民の生命・財産を扱う立法や行政の業務を滞らせることがないように、業務の継続性や効率性、危機管理、多様性などの観点から立法府としても行政府としても国会におけるオンライン審議が行えるように環境整備をしたほうが良いという結論を私は持っています。

その一方で、オンライン化が国会の審議を形骸化させるものであってはなりませんので、オンラインでも政府与党が真摯に議論に向き合っていただく環境整備が必要であると考えております。

国会の行政監視機能を維持する観点から国政調査権を強化することに加え、充実した審議時間の確保、事前審査制度の改善、公文書の隠蔽・改竄をなくすことなど、その他の国会改革も併せて進めいていくことが重要であると考えておりますので、引き続き意見提言を続けていきたいと思います。