政府の会議委員になるための戦略:官僚はこうやって委員を選んでいる

政府会議の委員になれば政策を実現できる可能性が大きくなる

政策に皆さんの提案を反映させるには様々な方法があります。官邸の政治家や与党議員など想いを同じくする国会議員と連携したり、官僚に皆さんの提案の重要性を理解してもらって、政策をすすめてもらったりすることもその一つです。国を相手どる裁判で憲法違反や法律違反を証明したり、国会の場で野党から政策の不備を指摘してもらい、政府を動かすこともその一つといえそうです。

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こうしてみてみると、政治家や官僚、はたまた司法の力を借りなければ政策を実現することは難しそうですが、他にも方法はあります。政府の会議(審議会、検討会、懇談会など、様々な呼び名がありますが、ここでは「政府会議」とまとめます)の委員に皆さん(やその仲間)がなり、政策提案をするやり方です。

実は一般的に、法律などのルールを変えたり、新しい予算事業をつくったり、ガイドラインをつくったりと、新しい政策を導入するような場合、この政府会議を開催してその内容を決定することがよくあります。スピード感が求められる場合には、政府会議を開催せずに政策を決めることもありますが、政府会議の議論を通して、政策を決定することが一般的です。

政府会議で有名なものとして経済財政諮問会議があります。
日本政府の政策方針を取りまとめた骨太の方針の内容を議論する場として有名ですね。経済界の重鎮や大学教授やエコノミストが経済財政諮問会議のメンバ―として選ばれ、日本の政策が向かうべき方向性を議論します。

もちろん、彼らの意見だけが骨太の方針の中身になるわけではなく、関係省庁や与党の意見も最終的には骨太の方針には取り込まれて全体が出来上がるのですが、会議メンバーの彼らの意見も確かに骨太の方針には盛り込まれます(骨太の方針ができあがるプロセスについては第3回:骨太の方針とは(菅政権の最重要政府方針を理解する)をご覧ください。岸田政権下でも基本構造は同じです。)。

岸田政権下では新しい資本主義実現会議(こちらについては16回:岸田総理の「新しい資本主義」を読み解くでその構造を説明しています)や、デジタル田園都市構想実現会議も新しく立ち上げられました。これらは、新しい政権の目玉となる会議です。

一方で、政府会議はこのように官邸の旗振りで立ち上がる幅広いテーマを議論するものだけではありません。各省庁の局や課室の単位で立ち上がる政府会議もあります。こちらは、ある法案の中身など具体的な制度設計を議論するものです。

会議の格や位置づけはいろいろなものがありますが、それらの政府会議に共通するのは、何らかの政策検討のための会議であるということです。

長期的な展望を示すものもあれば、1年後に控えた法改正の内容を検討するものもありますが、何の目的もなく政府会議が開催されることはありません。

また、この政府会議、ほとんどの場合は、全会一致での議決が基本です。一人でも政府会議の委員が反対していれば、その政府会議としての決定はされないのです。先ほどお話したように、政府会議とは何らかの政策を検討するための会議なので、政府会議の委員に選ばれるということは、政策の意思決定の重要なステイクホルダーになることなのです。

政府会議の委員になれば政府の政策に影響を与えることができる可能性が大きくなるということがお分かりいただけたかと思います。この政府会議委員の選び方、委員に呼ばれる人材になる方法などについて実務に関わってきた官僚の視点から解説します。

(執筆:西川貴清 監修:千正康裕)

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年2月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。