「コラボレーション」や「限定」という言葉に弱いのは、人間の性だろうか。
今やコレクターアイテムとなった限定 & コラボモデルスニーカーを入手するのは困難を極め、高級時計も同様の状況。昨年末、パテック・フィリップがティファニーとコラボレーションした”ノーチラス”の170本限定モデルは業界の話題をさらい、そのうち一本が、チャリティオークションで650万ドルを超える金額で落札されたのも、記憶に新しい。
料理業界でも”コラボ&限定”の魅力は大きい。10年ほど前から、友人同士の料理人が組んでイベント的に行うコラボディナーがどんどん盛んになっているし、パティスリー系でも、フランスきっての老舗ショコラトゥリー「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」が、パティスリー界の巨匠ピエール・エルメとコラボしたスペシャル菓子を数年前に期間限定で販売し、大注目を浴びた。
そんな限定コラボブームの中、一際目を引く食イベントがパリで開催されている。フランス料理界の巨匠アラン・デュカスとスペイン料理界の大御所アルベルト・アドリアがタッグを組み、100日限定のレストラン「ADMO」をオープンさせたのだ。
きっかけは新型コロナウイルスだった。コロナ禍の中、バルセロナに展開する店を全て一時閉鎖せざるを得なかったアドリアと、パリの旗艦店を閉店したデュカス。それぞれの超腕利き料理人たちが開店休業状態なのだから、二人で特別な食体験を演出しよう、と生まれた企画だ。
デュカスがコンサルティングする「ケ・ブランリー美術館」の併設レストランを舞台に、美食を誇る2国を代表する2人が繰り広げる14皿の料理やデザート。いかにもデュカス的なヘルシーなものもあれば、アドリアらしい遊び心を感じる楽しいものもあり、2チームが共作した作品も。
料理だけでもコラボレーションの醍醐味満載でワクワクする上、ドリンクも魅力たっぷり。シャンパーニュの名門「ドン・ペリニヨン」がこのイベントに賛同し、「ADMO」の初日11月9日にラウンチした”ドン・ペリニヨン ロゼ2008”を、料理&ワインのマリアージュの主軸に。
カナッペ、主菜、デザート時に、それぞれ異なるグラスと温度で供され、味の違いを楽しませてくれる。スペインワインも多く供される中、弟アルベルトとともに世界的に名声を博したレストラン「エル・ブリ」で活躍したフェラン・アドリアが手がけるスペイン産ビールも登場し、フランス山岳地帯のチーズとのペアリングを提案。
新型コロナウイルスでフランスもスペインも食業界は大きな打撃を受けたが、この状況下だからこそ誕生した、世にも稀なスーパーシェフのコラボレーションレストラン「ADMO」。その名は、ここで唯一無二の美食体験をしたゲストの記憶に一生刻まれるだろう。