しれっと変更された厚労省アドバイザリーボードの超過死亡データ

鈴村 泰

Plyushkin/iStock

以前の解説で、厚労省のアドバイザリーボードの超過死亡数が間違っているのではないかと、私は指摘しました。その後、年末に厚労省に超過死亡数の間違いについてWebより質問しましたが、未だに返答はもらえておりません。ただし、完全に無視されたわけではなかったようです。1月26日のアドバイザリーボードにおいて、超過死亡の報告の仕方が、しれっと変更されていたのです。私の指摘や質問は、無意味ではなかったようです。

アドバイザリーボードでは、1か月に1回の頻度で、超過死亡について報告されています。まず、以前の超過死亡の報告を見てみます。

第63回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年12月16日)より引用してみます。

超過死亡数のみ記載されています。2020年の超過死亡数がプラスとなっており、既に報道されている事実と異なります。

次に、最新の超過死亡の報告を見てみます。

第69回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月26日)より引用してみます。

最新の報告では、超過死亡数に過少死亡数が追加されています。ただし、この書き方では、超過死亡数と過少死亡数の関係がよく分かりません。

基本的な考え方は、

[超過死亡数]=[観測された死亡数]-[予測死亡数]

ということです。

そして、式の値がマイナスとなった時に、超過死亡数の代わりに過少死亡数と呼んでいるわけです。超過死亡数ダッシュボードの週毎のグラフでは、値がマイナスの時は、超過死亡数をマイナスの数値で表示しています。累積のグラフの場合のみ過少死亡数という指標を用いているのです。

過少死亡数という指標は、海外のWebサイトでは一般的ではありません。海外では、このような場合は、超過死亡数をマイナスの値で表示しています。なぜ、過少死亡数というような妙な指標を使用しているのかについては、以前の解説の後半で説明しました。興味のある方は御覧ください。

表の数値は、累積のダッシュボードより取得されています。超過死亡数は次の式で計算できると、私は考えています。

[超過死亡数]=[累積グラフの超過死亡数]-[累積グラフの過少死亡数]

この式で計算すれば、超過死亡数は2020年は大幅なマイナス、2021年は大幅なプラスとなり、これまでの報道に合致します。しかし、国立感染症研究所と厚労省は、何故か意地でもこの式を認めたくないようです。

以上、「超過死亡と接種後死亡について再び考察(中編)」の後日譚でした。

【補足】

話を簡単にするために、

[超過死亡数]=[観測された死亡数]-[予測死亡数]

と説明しました。

国立感染症研究所のダッシュボードでは、

[超過死亡数]=[観測された死亡数]-[予測死亡数の95%予測区間の上限値]

という、もう一つの超過死亡数が提示されています。

前者が超過死亡数の上限値であり、後者が超過死亡数の下限値です。ダッシュボードでは、超過死亡数は[下限値-上限値]と区間で提示されています。どのような計算方法が超過死亡数において最適なのかについて、専門家の間でコンセンサスが得られていません。予測死亡数の計算方法は多数の方法が提案されています。そのため、国立感染症研究所では、前述の区間のなかに真の超過死亡数が存在していると解説しています。

現在、超過死亡に言及しているWebサイトは多数存在しています。それらのサイトを見る場合には、そのサイトにおいての超過死亡数の計算方法、データの取得方法が明示されているかチェックする必要があります。