プーチンのウクライナ侵略に関するトランプ発言が民主党関係者らの批判で炎上している。その発言はマー・ア・ラゴで22日に行われた、保守的なトークラジオ「C&Bショー」のクレイ・トラビスとバック・セクストンによるインタビューの中でなされた。
そのやり取りの書き起こしがネットで読める。内容は政権批判からコロナ禍まで多岐にわたるが、ここではウクライナ問題に関する部分を紹介し、これに対する民主党の批判について触れる。
バック: この24時間の間に、ロシアがウクライナの2つの分離地域を認めると言ったことが判っています。そして今、ホワイトハウスは、これは「侵略」であると述べた。これは強い言葉です。何か間違ったのでしょうか? 現在の大統領執務室は、何か違うことをしたのでしょうか?
トランプ:間違い不正選挙だが、何が間違ったかは、そこにいるべきでない候補者、自分が何をしているのか全く解っていない男がいること。私が昨日行ったところにテレビがあり、私は「これは天才だ」と言った。プーチンはウクライナの大きな部分を独立国と宣言している。おお、素晴らしい。
(略)私は「なんて賢いんだ?」と言った。そして、彼は平和維持軍として参加するつもりだ。それは最強の平和部隊だ・・ 我々(米国)の南の国境で使えるかも。それは私が見た中で最強の平和部隊だ。見たこともないほど多くの軍用戦車があったよ。彼らは平和を維持するつもりだ。いや、でも考えてみてくれ、ここに非常に心得た(savvy)男がいる・・ 私は彼をよく知っている とてもよく。
(略)私がオフィスにいたら、考えられなかった。こんなことは決して起きなかっただろう。(略)バイデンの反応を知っているかい?何の反応もなかった 彼らはそのためのものを持っていなかった。いや、とても悲しいことだ、とても悲しい。
バック: ウクライナでの実際の軍事衝突がエスカレートした場合、バイデン政権が巻き込まれる可能性はどの程度懸念しているのでしょう?
トランプ:そうね、むしろ南の国境に兵士を送るのを見たいですね(略、一頻り国境の話)。しかし、彼(バイデン)が少数の軍隊を送るという考えは好ましくない。向こう(ロシア)がやっていることに比べれば、冗談みたいなものだ。今朝聞いたところによると、彼(バイデン)は3,000人の軍隊を送るそうだ。そんなことして何になる?いや、我々の南の国境を守ってほしい。彼ら(ロシア)はウクライナを酷く扱っている。(今朝の記事を置いて)ロシアは、高騰した石油価格が主な収入源となっているので、非常に豊かになっていることを忘れないでください。
バック: 悪いインフレもある。クレイ:間違いない、7.5%。大統領、バイデンのツイートをお見せします。ほぼ2年前に「プーチンは私が大統領になることを望んでいない。彼は私が候補になることを望んでいない。なぜかというと、この分野で彼と正面からぶつかったことがあるのは私だけだからだ」と言っています。
トランプ:ええ。
クレイ:それから2年。プーチンはウクライナに侵攻しました。オバマ大統領の下でもプーチンは侵略しました(クリミアのこと)。プーチンとの関係については、彼は確かに貴方の時はそれをしようとしなかった。なぜ彼はバイデンにそれをやっているのでしょう?バイデンの威勢のいい言葉、現場の現実に反映されていないそのツイートについてどう思われますか?
トランプ:「Sleepy Eyes」のチャック・トッドも今週末の番組で–私は気分転換に見ていたのだが–「どうしてトランプ政権の間には侵略がなかったのに、オバマの時には侵略して–非常に厳しい侵略をして、その後待っていたら侵略してきたのか?」と言っていますね。
私たちがいればこんなことにはならなかったはずです。でも彼はやった。(略)私はプーチンを良く知っていた。彼とはとても仲が良く、彼は私を気に入ってくれた。私も彼が好きだった。つまり、彼はタフで、素晴らしい魅力とプライドを持っている。でも、彼は自分の国を愛している、わかりますか?彼は自分の国を愛している。今、彼は少し変わった行動をとっていると思う。
彼はチャンスを見計らっていると思う。ずっとウクライナを望んでいることは知っていた。そのことをよく話していた。私は「君には出来ない、無理だよ(You can’t do it. You’re not gonna do it.)」と言ったものだ。(略)今朝、私たちがしている議論に関して、おそらく彼のことをこれ以上知っている人はいないと思う。だから、私は彼のことをとてもよく知っている。私は彼を知ることができた。習近平主席のことも知っている。ところで、次は中国の番だ、中国は……
クレイ:台湾を狙うということ?
トランプ:ああ、絶対にそうだ。私(が大統領)なら違う、彼らはそうしないだろう。
クレイ:しかし、バイデン(が大統領)なら、彼らは彼を試すとお考えですか?
トランプ:ええ。彼らはオリンピックが終わるまで待っている。(略)彼(習)は同じようにそれを望んでいる..双子の姉妹のように。台湾を望んでいる者がいるので、同じように酷いと思う。誰かが「どちらがより望んでいるか?」と言った。おそらく同じくらい酷いと思う。でも、(私が大統領だったら)プーチンも習もそんなことはしないだろう。そして北朝鮮も4年間、行動を起こさなかった。
トランプは、プーチンが21日までに踏んだ、ドンバス「両国」承認⇒友好条約締結⇒平和維持軍派遣(国連憲章51条7項に基づく特殊軍事作戦は24日)という手順を、事の正邪は措いて、誤解され易い一流のレトリックで「天才」「素晴らしい」と賛した、と筆者には思われた。
が、ホワイトハウスの報道官は24日、ハフポストの「ウクライナが震え上がる中、トランプはプーチンの侵攻を『かなり賢い』と呼ぶ」と題する記事をシェアし、前の米大統領をロシアの独裁者と比較した。
ベイツ報道官は「米国が象徴するものを嫌い、そのすべての行動は彼ら自身の弱さと不安によって引き起こされ、鼻をこすり合わせ、罪のない人々が命を失うのを祝っている、吐き気がするほど恐ろしい2匹の豚」とツイートした。
民主党サンダース上院議員も24日、「トランプがプーチンのウクライナへの殺人的侵略を『天才』の行為と賞賛することは、驚きでないにせよ、言語道断だ」、「プーチンはまさにトランプが望むような指導者で、これを声高に言う勇気のある共和党員が殆どいないことは、我々にとって懸念すべきこと」などとツイートした。
そして真打のヒラリーは25日のMSNBCのインタビューで、トランプがプーチンに「援助と慰めを与えた」と非難し、共和党員はトランプを自分たちの価値観と一致する強い指導者と見なし、プーチンの「民主主義の弱体化」という野心に乗っかっていると主張した。
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トランプ発言が民主党の格好の餌食になった格好だが、その発言が22日、つまり24日の全面侵攻が始まる前に行われていたことには、報道官もサンダースもヒラリーも一言も触れていない。こうしたちょっとした捏造が、トランプ非難に一貫して行われている常套手段だ。
それが証拠に、トランプは26日にフロリダで行われたCPACでの演説で「欧州の大規模な戦争」に触れ、「ロシアのウクライナへの攻撃は酷いもので、決して許されるべきではないし、起こるはずもない残虐行為だ」、「我々は誇り高きウクライナの人々のために祈っている」と述べ、こう続けた。
私が大統領だったら・・それは起こらなかっただろう。ロシアはブッシュ政権下でグルジアに侵攻した。オバマ政権ではクリミアを占領し、バイデン政権でウクライナに侵攻した。21世紀の大統領の中で、私はロシアが他国を侵略しなかった唯一の大統領だ。
そしてレポーターから「プーチンは頭が良いと思うか」と聞かれたので、「勿論、良い」と答えたら、「そんな酷いことを言うのか」と言われたとし、「問題はプーチンが賢いことではなく・・我々の指導者が間抜けなことだ」と付け加えた。つまり、プーチンの全面侵攻を称賛している訳では決してない。