米国の科学リーダー:フランシス・コリンズ博士が、エリック・ランダー博士の後釜に
エリック・ランダ―博士がパワハラ問題で退任した、アメリカ大統領府科学技術政策局トップの後任人事に注目していた。予想されたことであるが、昨年末でNIHの所長を退任したフランシス・コリンズ博士が指名された。ただし、その責任をランダ―博士の下で働いていたアロンドラ・ネルソン博士と分担するとのことだ。
この人事に対して、Scienceの編集委員長が「Biden does’t get it」というタイトルで批判していた。科学の世界における差別や偏重をなくすために、科学界が立ち上がるべきで、そのためにはネルソン博士を昇任させて、ランダ―博士の後任にすべきだという強いコメントだ。権威のある雑誌が、厳しく政権の人事批判をするのは異例だ。
若手研究者が公平・公正に研究費の配分を受けるために、女性や有色人種が恵まれる将来を描くために、政治家が過去の実績ではなく将来を託す人材を育成するために科学界が責任を果たすべきと訴えていた。
日本が停滞しているのも、ムラ社会のボスたちが牛耳っているからだ。「和をもって尊しとなす」が行き過ぎると、ボス支配の談合による閉塞した世界につながるのは自明の理だ。
若い研究者にチャンスを与えてこそ、科学の発展が生まれ、この国からイノベーションが生まれる。自然発生的に生まれてくるのではなく、生み出すための制度・システムの改革が必要だ。戦後の社会制度が続く日本は限界にきている。
公正で公平な仕組み作りさえできれば、科学の世界は生まれ変わることができる。そして、日本再生が可能となる。日本にこそ、このような体制作りができる人材が必要だと思う。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2022年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。