ウクライナ戦争で「命が大事だからウクライナは降伏しろ」といって大バッシングを浴びた橋下徹さんが、今度はゼレンスキー大統領に「逃げるな。玉砕しろ」と進言し、NATOの軍事介入を求めるタカ派に急転回しました。
英米 ウクライナ大統領の脱出準備 – Yahoo!ニュース
➡︎ゼレンスキー大統領は脱出を拒否するものと確信している。戦争指導者の脱出やその準備は絶対にダメだ。命が助かる立場だと政治的妥結の判断が狂う。日本にいる戦え一択の勇ましい者たちと同じになってしまう。 https://t.co/6DBawp64Ls— 橋下徹 (@hashimoto_lo) March 8, 2022
これには専門家からツッコミが入りました。
WWIIにロンドンにあった数多の亡命政権の末裔が現在の主要欧州諸国の政権。亡命政権が効果を発するのは首都の占領後(それ以前ではない)。こんなの歴史の常識で解説する必要もない。
「1940年代の極東の日本の事例だけを参照して、2022年の欧州を語れ!」と主張する「評論家」さえいなければ。 https://t.co/LMKd3mzZ7r— 篠田英朗 Hideaki SHINODA (@ShinodaHideaki) March 8, 2022
海外に亡命政権をつくって戦争を続けるのよくあることで、恥ずかしいことではない。ドゴールも第2次大戦中はロンドンに亡命して戦争を指導しましたが、終戦後には英雄として本国に迎えられたのです。
ゼレンスキー大統領の演説をテレビ朝日が「NATOのせいで死ぬ」と訳すと、今度は「ウクライナを見殺しにするな。NATOは介入しろ」と批判。
ゼレンスキー大統領「NATOのせいで死ぬ」…“飛行禁止空域”巡り痛烈批判(テレビ朝日系(ANN)
ゼレンスキー大統領:「飛行禁止空域の拒否は、ロシアがウクライナの都市に、空爆を行なってもよいと、NATOが許可したことを意味する。 https://t.co/3IYOXxwEUV— 橋下徹 (@hashimoto_lo) March 8, 2022
これに対しては「NATOが軍事介入したら核戦争になる」というコメントが殺到。
いや。核戦争でもおこしていいならよろこんでやるんだろうけど。
橋下さんの言うこともわからないでもなく、どっかで政治的だ今日は必要なんだけど、プーチン側がまったく譲歩みせずに無条件降伏しろとしか言ってないので妥協できない。 https://t.co/78ykD4qdk3
— もへもへ (@gerogeroR) March 9, 2022
西側諸国はウクライナを見殺しにしているわけではなく、情報網の支援や経済制裁など軍事介入以外のあらゆる支援をやっています。今のロシア包囲網は戦後最大のスケールですが、これが橋下さんには(ヒトラーのチェコ侵略を認めた)チェンバレンのような弱腰だと見えるようです。
旧ソ「ミグ29」のウクライナ提供が難航 米国がポーランド提案拒否
➡︎アメリカもポーランドも結局自分が責任を負うことから逃げる。西側はロシアとは戦えない。ゆえにウクライナに戦わせている。チェンバレンよりもはるかに愚。自分が戦えないなら政治的な妥結を探れ! https://t.co/3F9VwtWaOx— 橋下徹 (@hashimoto_lo) March 9, 2022
プーチンの求める中立化というのは、ウクライナが武器を捨てて降伏しろという意味です。今までの停戦交渉でも、ロシアがウクライナの武装解除やクリミアの主権承認を求めるので、交渉にならない。
橋下さんは一貫して勘違いしているが、ウクライナはNATOに加盟していないので、NATOは停戦交渉の当事者ではない。プーチンのいう「中立化」とは、ロシアの領土になれということ。侵略で敵国を併合できたら、国際法は成り立たない。この情報もタス通信のデマだろう。 https://t.co/ks6XXy5QAW
— 池田信夫 (@ikedanob) March 9, 2022
ウクライナはNATOの加盟国ではないので、NATOは軍事介入する義務を負いません。したがって停戦協定の当事者でもない。戦争になったら、軍事力なしに政治的妥協はできないのです。これは平和な日本で、労使交渉ぐらいしか政治的交渉の経験がない橋下さんの限界ですね。
歯がゆいのはわかりますが、戦争は政治の目的ではなく手段なので、NATOが核戦争に勝ったとしても、何百万人も犠牲を出すわけにはいかないのです。橋下さんもご存じのはずのクラウゼヴィッツの有名な言葉は、そういう意味です。
戦争は一つの政治的行為である。戦争は他の手段による政治の継続にすぎない。