日本の防衛産業は完全に壊滅させた方が日本の国防のためには有利になるのではないでしょうか。日本の防衛産業はメーカーとして自主性がなく、市場経済にさらされることもなく、防衛省に寄生しているだけです。まるで親に養ってもらってて中年になった「子供部屋おじさん」みたいなものです。
防衛省、自衛隊は軍隊の常識的な知識がないので、夢想的な装備開発を行います。しかも金銭的な感覚が欠如している。このため合理性のない、実用性の怪しい装備が多数開発されて、諸外国の3~10倍ぐらいで調達され、それを異常とも思わないぐらい感覚が麻痺しています。
本来装備は何のために、いつまでに戦力化する必要あって調達するものですが、防衛省では調達自体が目的化しています。それは実は脅威は存在しないと言っているのと同じことです。そして例えば装甲車輌でも全部の装甲車輌のポートフォリオを決定して個別の車輌を調達する計画が存在しない。戦車は新調しても歩兵戦闘車は30年前のものを近代化すらしない。これで機甲戦が戦えると思っている。
住重の機銃の品質偽造に40年以上も気が付かない、9ミリ拳銃が2500発でクラックがはいり、寿命が一桁少ないのを知らなかったのですが、「専門家集団」とはいえないでしょう。あるいは事情があって騙されてフリをしていたのか。納税者にしてもればどちらも犯罪的な背任行為です。
メーカーも輸出をしないので、海外の製品と市場で競合して揉まれることもない。そもそも大手企業は、防衛はせいぜい数%の売上しかない。そして作れば全部買ってくれるので、利益は低くても必ず儲けはでます。
ですから政府が輸出しろといってもやりません。リスクを抱え込むからです。国内需要は大変小さい、その小さな市場を複数のメーカーで分かっているから更に弱体化しています。開発ペースが遅いので一人の設計者が開発に関わるのは1回だけ、というのも珍しくない。
「頭のおかしい」レベルの自衛隊だけが、顧客でありその言いなりになっているので、まともな装備を作れないし、諸外国の動向にも明るくない。
その結果、他国が例えば5~10年で調達、戦力化するようなものを、30年も掛けて調達する。しかも30年という計画あればいいが、それすら実は存在していない。
そして「自衛隊の常識は軍隊の非常識」なので、無人機やRWS(リモート・ウェポン・ステーション)など新しい装備の導入は極めて遅い。
結果低性能、低品質の製品、を細々と調達する。調達途中で旧式化、下手をすると調達が完了しない。これは国産だけではなく輸入品も同じです。国産と同様に調達するから、ダラダラ少数調達を続けるからコストが高くなる。
70年代ぐらいまでは防衛装備の国産化はまだリーズナブルなところがありました、GDPの拡大に沿って市場も拡大してきたわけです。質が劣っても、値段が高くても防衛産業を維持・発展させるためのコストだと割り切れました。それを支える税収もありました。
ところがこの先防衛産業が発展、発達する可能性は殆どありません。そして何倍も高い国産装備を買い「子供部屋おじさん防衛産業」を養う余裕は、1000兆円を超える国の借金があり、国家予算の三分の一を借金に頼っている我が国にありません。
例えば諸外国並の調達システムを導入し、国産装備を完全に排除する。そうすれば、調達単価、期間は数分の一に減ります。C-2とかP-1のような維持費が何倍も高い装備を買う必要が無くなる。そうであれば装備のライフサイクルコストも数分の一に減らせます。装備調達費は数分の一になります。
整備に関しては国内企業にやらせてもいい、あるいは外国企業に国内の整備工場込で契約をすればいい。実際エアバスヘリは神戸に持っています。日本の整備工場で周辺国の整備もやらせれば、それで稼ぐこともできるでしょう。今や人件費は途上国よりも安いのですから。
防衛産業に使っているリソース、資金、設備、人員はもっとカネの儲かる商売に使って、儲けを出してもらって納税してもらうほうが良いでしょう。
装備庁は解体して、装備調達の政府が黄金株を持つ株式会社を作るべきです。そしてバランスシートを公開して透明性の確保を図る。社員は全部お雇い外国人にする。例えばイスラエルあたりの退役者などをリクルートする。調達の効率化、コスト削減の度合いによっては、役員に億単位のボーナスを払ってもいいでしょう。会社が軌道にのったら日本人社員の採用を考えてもいいでしょう。
このぐらいの荒治療をしないかぎり、防衛省、自衛隊の当事者能力欠如の調達は変わらないと思います。
【本日の市ヶ谷の噂】
防衛省では医官退職の防止のため兼業制度ができた。兼業(専門医資格の維持のため、週1日の部外病院へ勤務する制度、報酬あり)通修(専門医を取得するため、週1~2日の部外病院へ勤務する制度、報酬なし)だが、これらをまじめに行う医官は少数派との噂。
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European Security & Defence誌 2月号に寄稿しました。(Japan’s Defence Budget –an Issue of TransparencyP68~69)
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年3月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。