(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「プ―チンはウクライナで核兵器を使うのか?」――こんな議論が米国で真剣に交わされるようになった。ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ侵攻に際してロシアの核戦力部隊を臨戦態勢におくという措置を宣言したからである。
米国の専門家たちの間では、今のところ、プーチン大統領の核発言は米欧諸国のウクライナ支援を抑えるための脅しであり、実際に核攻撃をかける可能性は低いという見解が多い。だが一方で、ロシアの近年の核戦略では小規模な戦争で小型の戦術核兵器を実際に使って戦闘を勝利に導くという手段が現実の政策選択肢として確立されており、実際の危険性は高いとする専門家たちも存在する。さらに米国の一般国民の間でも、プーチン大統領の実際の核兵器使用への懸念が高まってきた。
専門家だけでなく米国民一般も強く懸念
プーチン大統領は2月27日、ロシアの国防大臣と参謀総長に対してロシアの核抑止部隊を「特別の臨戦態勢」におくことを命令した。「核抑止部隊」とは核戦力の部隊のことである。
ロシア軍は2月24日にウクライナへの軍事侵略を開始していた。その3日後の「核抑止部隊の臨戦態勢」への配置はウクライナでの戦闘に核兵器を使う可能性を示していた。プーチン大統領は侵略的な野望を核兵器を使ってでも実現すると、全世界への威嚇をこめて宣言したわけだ。