本日の午後6時から国会で、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の演説が、リモートで行われる。私は今回の演説の許可には、おおいに疑問がある。
まず、もしこれが可能なら、たとえば、同盟国アメリカが極東以外で戦争しているときに、大統領が希望したらさせるのかというような問題がある。
だが、それよりも、中国に空母を売り、北朝鮮にミサイル技術を流出(北朝鮮からの労働者など入れたらスパイが混じっていたとか説明しているが内部の協力がないと無理だろうし、どうしてそんなところに北朝鮮の労働者を入れるのか)させたりしたことを、なかったことにし、今後は絶対にそういうことはないという確約もさせず、不問に付して特別の機会を与えるべきでない。
北方領土問題についても、ウクライナは関係ないわけでないし、シベリア抑留というがウクライナに抑留された人もいる。欧米については、それと同種の問題はないのだであるから、歩調を合わせる必要はない。
それはともかくとして、ゼレンスキーを世界が英雄のようにもてはやすのは、明らかにおかしい。彼の呼びかけは、不必要に戦争の残虐化をもたらしすぎだ。
この戦争で、ゼレンスキーに、欧米も西部のリビウなどへ待避しての抵抗とか、海外の亡命政府を勧めたようだ。しかし、彼はキエフに留まり、市民に武器を配布し、抵抗を呼びかけた。市民の待避にもあまり熱心に見えないし、成年男子は出国を禁止している。
しかし、近代史をひもといて、大統領や首相が首都に留まって、民間人にまで抵抗を呼びかけた例というのはあるのだろうか。
フランスは、普仏戦争では政府はベルサイユに待避して、パリで無防備都市を宣言したし、第二次世界大戦でもドイツが攻めてきたときは、抵抗していない。今度は、連合軍とレジスタンスがパリに迫ったときには、ドイツ軍のコルテッツ将軍がパリをまもるために抵抗せずに降伏している。
日華事変のときの南京でも、蒋介石は早々に退去している。朝鮮戦争のときの李承晩大統領も退去している。
首都でも都市でもないが、沖縄戦では、当時の島田知事が陸軍は本部のある首里で最後まで戦って民間人の被害を少なくして欲しいといったにもかかわらず、牛島中将は島民が避難している南部へ退却し、その結果、島民の3分の1が死ぬという悲劇を生んだ。
私も沖縄で勤務していたからよく知っているが、この陸軍の行いは批判囂々であって繰り返すべきでないと習い私もそう思っていた。
ところが、今回は首都で一緒に戦えと大統領がいっている。もはや市民を盾にしているに等しい。マリオプール攻防戦でも、ウクライナ側は安全な待避路がないとか、ロシア側に市民を待避させるのは避けたいとかいっているが、結局のところ、市民を盾にした抵抗をしており、既に何千人も死んでいるようだ。
こんなかたちの市街戦はあまり例がないので、何が正しいのかもよく分からないが、たしかな話は、人類史上でまれに見る悲劇が迫っていると言うことだ。
欧米ではゼレンスキーを英雄だといっているが、本当にそれでいいのだろうか。私は、これから、侵略を受けたら、市民も一緒に最後まで抵抗するのが筋と言うことになるのがいいとは、思えないのだ。
第2は、いまのウクライナで、和平派とかロシア系市民といったひとたちの意見がほとんど聞こえてこないことだ。ゼレンスキーはユダヤ系だが、東部の生まれなので、母国語はロシア語で、ウクライナ語は最近まで流暢には話せなかったようだ。
ウクライナでは、ロシア語が普通に使われていたが、いまは、厳しく使用が制限されている。ウイグルとかの少数民族言語の使用を批判している人たちが、どうしてロシア語とロシア語系市民の抑圧をしていいのかも問題だが、反政府系の声がほとんどインタビューでも聞こえてこないのが不気味だ。モスクワでのほうが驚くほど、反政府的な運動や発言が自由なようだ。
先頃の第一回の和平交渉での出席メンバーが会議後に、スパイだといって射殺された。裁判にもなにもかけずに、である。本当にスパイであっても許されない。これでは、うっかり和平に傾いた意見もいえない。
太平洋戦争のときの日本でも、重臣だった岡田啓介元首相も、戦後、和平を提案などしようものなら、天皇陛下といえども除かれる可能性があったので、本来の意見をいえなかったと回想している。というか、それが死亡者のほとんどが集中した無駄な最後の一年間の戦争継続の原因だった。
さらには、8月15日にゼレンスキーのような演説をして、陛下はして戦争継続をされなかったのは、間違いだったのだろうか。
テロが怖くて、原爆落とされるまで降伏出来なかったのである。もっとも、私は一部の人とちがって無条件降伏をしたほうがいいと勧めるのではない。キエフのような大都市と心中することはやめたほうがいいというだけだ。降伏以外にも中立化の提案という方法もある。それすらしないのが、そんな美徳なのだろうか。
この異常な状態は、キエフ市長がボクシングの元ヘビー級チャンピオンだというのにも関係するのかとか思ったが(指導者内で物理的な力がゆえに自由に意見がいいにくいということ)、この戦争のやり方が通ったら、これからの戦争は、市民を巻き添えし、相当な死者が出ないと和平は無理という時代の号砲になりかねない。
ゼレンスキーが各国に助けてもらいながら、細々ときままに大衆に向かって各国を批判したり、個別企業のビジネスをやり玉にあげたりして「紅衛兵化」している。当然、ビジネス上の魂胆でゼレンスキーに言わせるように仕向けて工作する輩もいるはずだが、それが怖くて、過大な弊害が出たり、中国などがビジネスを安価に横取りするために動いたりするのであれば、筋違いだ。