夏の参議院選に向け自民党は盤石か、で私の見方はYESです。確実と言ってよいでしょう。それは岸田首相に人気があるというより岸田首相がフォローの風の中で幸運をつかんだ、と言ってよいと思います。
岸田首相の就任当初、私は(個人的にはスタイルは好きではないけれど)長期政権になると思う、と述べさせて頂きました。敵が周りにいないなど様々な理由がありますが、岸田氏の性格ともいえる踏み込み方が典型的な日本のサラリーマン型なのです。つまり絶対に一人で飛び出さない、強いところと一緒に走る、足場はしっかり、石橋は3度叩く、です。もっとわかりやすく言えば岸田氏の進め方は会社の決定プロセスと同じ仕組みなのです。まず、呟く、そして根回しをする、賛同が得られそうならその声を少しずつ大きくして、次に稟議をする、正式なプレゼンテーションをする、最高決定機関で決める、まさにこの流れをしっかり踏んでいることで敵が極めて少ない歩の進め方をしています。
弱点はないのか、といえば大ありで外交はダメだと思います。そもそも印象に残らないので、就任直後に行ったCOP26にしろ、先日のG7にしろ、「参加したという事実」だけであってそこで強い印象を残してきたわけではありません。インドで大盤振る舞いしたことへも批判の声があります。つまり外務大臣経験者なのに外交が下手という弱点はあります。
しかしうまい具合に国内の選挙の場合、外交案件は選挙民にとって主たるイシューにならないのでこの夏の選挙ではほとんど影響することはありません。
上手にやったな、と思ったのが堀内詔子ワクチン担当兼五輪担当相の実質更迭です。「実質」というのは更迭にすると首相の任命責任を問われるので「五輪担当相は3月末までの時限ポジションで大臣ポストそのものが消えるのでついでに内閣法上のワクチン担当相の枠がないのでそちらも降りてもらう」ということです。
実際には堀内氏のワクチン担当相としての働きぶりはひどかったと思います。河野太郎氏がたまらずに助け船を出すシーンもあり、それに対して堀内氏が「教えてください!」でした。何を甘ったれてたことを言っているのか、とあきれ返ってものも言えませんでした。当然、評価担当者である岸田首相は「落第点」の評価だったはずでどこでこの人事を動かすか、考えていたはずです。
そこでワクチン担当相のポジションの重みを外すための工作をします。明らかにコロナから回復傾向にあるということを国民に周知させるのです。入国規制も緩めたし、まん防も解除されます。感染者数は漸減ながらも回復傾向で重篤化はしにくい、医療崩壊も起きていないことを改めて認知してもらうことでワクチン担当相のポジションの色を薄くしていったのです。周到です。
岸田氏にとってフォローの風がもう一つあります。それはウクライナの戦争です。戦争が起きた場合、政権支持率が高まるのは世の東西を問わずどこも同じです。アメリカで911が起きた時のブッシュ政権は支持率が一時9割を超えました。理由は国家全体が一丸となり、保守的になるためです。岸田首相が次々に打ち出した欧米追随策は「強いものに巻かれろ」という点で国民に安ど感を生んだのです。
では野党はどう展開するか、です。ざっくり言うなら自民が圧倒するなかで野党の声はかき消される、よって与野党という対立軸の崩壊を予想しています。まず、国民民主党の玉木代表が与党の仲間入りをしたくてうずうずしています。但し、玉木さんと代表代行の前原誠司氏が全く合わないので再分裂の可能性がないこともない気がします。そうなれば泡沫政党になるので連立与党入りといった話ではなくなるでしょう。前原氏はぶち壊すのが得意な方なのでその能力を発揮するか見ものです。
維新ですが、松井氏が予告通りのリタイアとなれば次の一手に注目が集まります。政党としては伸びる余地は大きいのですが、全国区としてどのような独自性あるボイスを出せるのか、ここ次第です。
立民は泉氏が埋没していることが最大の問題です。そもそもあの党には「うるさ型の重鎮」と「声のでかい方々」が多く存在します。例えは悪いですが、アメリカの民主党が先の大統領選の際、大統領候補が乱立し、一体この政党は何処を向いているのだろう、と理解に苦しんだ時と似た構図になりつつあります。
その点からするとブレが少ない岸田政権下の自民党は少なくとも夏の選挙は十分に乗り切れるだけの蓄えを既に持っているとみてよいでしょう。まだ選挙まで3か月強ありますが、「圧勝」の声がかすかに聞こえてくるようなそんな状況かと思います。
最後に自民党に一言、それで踊っていると必ず、落とし穴があることにも気を付けてもらいたいものです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年3月28日の記事より転載させていただきました。