国会質問とは
政策を変えるには、自分たちだけでなく、色々な人から政策を提案し、政府が「この政策をやらざるをえない」と考える状況を作っていくことが大事です。
そのために、様々なステークホルダーに対する働きかけが大事になってくるわけですが、政府に影響力を持つ国会議員はその重要なステークホルダーの一つです。彼らとの連携が政策を実現する上でカギになってきます。
議連を立ち上げて、提言を出してもらうというのも一つですし、与党の事前審査の場で政府の政策を変更するよう議員から声をあげてもらうこともその一つです。国会質問はその議員が使うことのできる有力なツールなので、政策を前に進めたい皆さんにも是非活用していただきたいと思います。
国会質問はテレビで中継されることもあるため、議連の活動や与党の事前審査よりはなじみのある議員活動かもしれませんが、国会質問が実際に政策にどう生かされているのかをハッキリと理解できている人は少ないように感じます。
今回は、数多くの国会質問通告を受け、大臣などの答弁メモを書き、国会での議論を踏まえて政策検討をしてきた経験も活かして、どうやって国会質問を政策実現に活用していくかということを詳しく解説していきます。
国会質問で政策が変わることがある
実際に国会質問がきっかけで政策変更につながったと思われる事例を紹介します。
以前、無料記事で取り上げましたが、2021年3月に、生理用品が買えない女性を支援するため交付金の用途に生理用品の配布を加えるよう政策変更が行われました。
(参考)京都新聞:https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/534737
この政策変更は、国会での質問が影響したと考えられます。
2020年11月17日に国民民主党の伊藤たかえ議員が国会で取り上げたのを皮切りに公明党の佐々木さやか議員、共産党の畑野君江議員、立憲民主党の蓮舫議員ら各党の女性議員が国会の場で支援の必要性を訴え、その後、その国会質問の意見を取り入れる形で政策変更がなされたからです。
2020年11月17日 参・文教委 国民民主党 伊藤たかえ議員
PoliPoliという政治プラットフォームに寄せられた政策リクエストにお応えするという形で、生理にまつわる政策に取り組んでおります。…生理の社会的地位と経済的負担というところも見逃せないところです。…仮に毎月の生理用品代を千円と仮定した場合、負担は四十八万円になります。
国会会議録検索システム:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120315104X00220201117/155
2021年3月4日 参・予算委 公明党 佐々木さやか議員
…この生理の貧困の問題について、女性や子供の貧困、児童虐待などの観点から実態を把握し、学校での無償配布など必要な対策を検討していただきたい…。
国会会議録検索システム:
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120415261X00420210304/106
2021年3月10日 衆・文科委 日本共産党 畑野君枝議員
…経済的理由などにより毎月の生理用品を購入することができない生理の貧困が可視化されています。…必要な児童生徒に対する生理用ショーツの配布…等を早急に行うべきではないか…。
国会会議録検索システム:
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/120405124X00320210310/170
政府からあの質問があったので政策を変えました、ということはほぼないので、国会質問がきっかけで政策が変わったかをハッキリと断言することは難しいですが、上記で示した国会質問と政策変更の時系列を見てみても、国会質問が政策に影響したと考えるのが自然でしょう。
現場の肌感覚としても国会質問で政策が変わることは間違いなくあります。西川も官僚として国会質問をきっかけに大臣が事務方に対応を指示する場面に遭遇したことは何度もありました。
また、例えば予算を作る時も、各省から予算要求をして、財務省の査定を受けるのですが、その際も単に各省がその政策を推進したいというだけでなく、国会で政策の強化を何度も指摘されているという事実は、予算の必要性をぐっと説明しやすくなります。
ところで、国会議員は自分個人の趣向で質問しているわけではなく、ほとんどの場合誰かの声を背負って質問を考えています。支援者や民間団体・企業の困りごとや提案を踏まえて質問を作ります。そのためのインプットは日常的に行われています。
国会質問をきっかけに政策が動くことも大いにあるので、政策提案を行おうとする方々の立場に立つと、国会議員から政府に質問をしてもらうということは、とても有益です。そのためには、そもそも国会議員が質問を考えるきっかけが何なのか、国会質問で聞くことができる内容が何かについて理解を深めることが必要です。今回はそれらを整理して説明を行っていきます。
(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2022年3月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。