住宅地における薪ストーブ、暖炉より発生する煤煙の有害性と、脱炭素施策のバランスについて調査を検討ください。
日本においてこの分野の研究は恐らく皆無であると思われます。 欧米では既に研究報告が複数有り、木質燃焼煙も明らかに有害であると指摘され、厳しい規制が行われていますが日本では規制なしです。
カーボンニュートラルの掛け声と共に、日本国内において木材燃焼を無条件に推奨する風潮が拡散していることに、大きな危惧を持ちます。
SDGsは誰も置き去りにしないという理念が有るはずですが、脱炭素を大義名分に、薪ストーブ、暖炉、薪ボイラ等の煤煙悪臭による住環境の大気汚染が健康被害者を増加させ、脱炭素の犠牲、既に置き去りにされている現実が有ります。
日本各地で、住宅密集地域内に薪ストーブや暖炉を設置した家屋が急増し、その煤煙悪臭に被害を受けている事例が急増していますが、法規制が無いために周辺多数の住民は声を上げることすらできず、置き去り状態にされています。
実害としては、燃焼由来の有害物質、悪臭吸入による精神身体への健康被害、換気不能、洗濯物を干せない、家屋等の汚損という生活上の抑圧、一番懸念されるのは呼吸器系疾患です。
短期的にも喘息発作、これは悪化すれば死に至ります。長期的には連続で燃焼微粒子吸入による呼吸器、循環器その他様々な疾患の原因になることは、医学的には明らかです。
多くの周辺住民に対して健康被害という実害、生活上の苦痛や不快を一方的に与えて、なぜこのカーボンニュートラル理由の燃焼行為が許容されるのか理解に苦しみます。
薪ストーブや暖炉の排煙についての法規制が存在しないというだけの理由です。規制できない、しない理由は明白です。林業関連、造園関連業者の抵抗です。
脱炭素と森林保全、林業関連、造園関連業者の利益という名目のために、住環境における局地的大気汚染を増加させ、健康な生活を脅かしていることが、果たして政策として正しいことでしょうか。
温暖化抑制は必要ですが、そのために例え木質燃焼であっても煤煙悪臭がなぜ許されるのか、この点について大いに疑問を感じます。
エコであるかどうかという事は私は研究者でも無いので言及しませんが、しかし、樹木を燃やせば煤煙臭気は必ず出ます。完全燃焼すれば、触媒や二次燃焼室が有れば煤煙臭気は出ないという事も言われていますが、欧米の基準規制に適合した外国製の高価なストーブと乾燥した薪でも煙と臭いは出ます。
燃焼温度は不完全燃焼で800℃前後の低温で、触媒や二次燃焼室が有っても実際には有害物質や臭気は燃焼し尽くされません。燃焼対象物によりますが、一般的には安定した1000℃前後でないと、無害無臭にはなりません。
自然の樹木間伐材を大気開放圧、自律燃焼である薪ストーブの中で燃やしても、ベンゾピレン、一酸化炭素、酸化窒素、フェノール、ベンゼン、ブタジエン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、pm1.0やpm2.5は出ます。全て毒物。そのまま煙突から撒き撒き散らされ、周辺住民はこれを吸わされ健康を害します。
木質燃焼は無害で臭くないなど嘘です。 薪ストーブユーザーや販売施工業者が「 乾いた薪なら完全燃焼する」「温度が上がれば煙も消え、臭いも出ません」「近隣に迷惑になることは有りません」と言いますが現実にはかなりの煤煙臭気が出ています。
民家、事業所等の薪ストーブ、暖炉、野焼き等より発生した煤煙臭気は周辺に広がり、継続燃焼されるためにその煤煙臭気はその地域の大気汚染となっています。
特に郊外の住宅地での民家の薪ストーブの煤煙臭気は、近隣家屋にとって逃げ場もありません。エコだ、森林保護だと言えば、大気汚染も許されるのでしょうか。
1年の半分強の長期間にわたりこの煤煙臭気を否応なしに吸わされ、健康被害も起きています。喘息患者には致命傷となる汚染大気です。現代の一般的な住環境では、煤煙悪臭を常時撒き散らすことは容認されません。
火鉢や調理の煙と同じ、という言い訳も聞かれますが、出てくる煤煙臭気の量も桁違いに多いのです。工場や塵芥処理場、火葬場等、排煙のある設備は厳しく管理され、排出される煤煙臭気は無いに等しく低いのですが、住宅地の中で多量の煤煙と多くの他人が不快と感じ、火災と間違えるほどの燃焼悪臭をまき散らすことがなぜ許されているのか、理解に苦しみます。
木質バイオマスであっても、長期継続で燃やせば大気汚染の原因になる事実を広く明らかにして頂きたいのです。
薪ストーブの燃焼は、LNG燃焼の300倍以上の有毒物質を出します。不特定多数への長期的影響が念慮されうる大気汚染公害と言えるものです。本来、受動喫煙やディーゼル車規制同様に取り組むべき問題ですが政府も自治体も全く関与、取り合おうともしない理由が分りません。
地球、各国レベルの環境政策は大切ですが、そのためにはまず足元、身近な生活環境の保全がまず重視されるべきです。
温暖化抑止のために健康被害を発生させるなど、本末転倒な施策としか言えません。
規制が必要というのは、逆に温暖化抑制のためです。規制が創設され強化されれば、逆に木質バイオマス利用の裾野が広がるのです。煤煙悪臭さえ発生させないような燃焼機器の開発が促進されます。
温暖化抑制対策のために木質バイオマス燃焼がもし正解だとすれば、その施策を進めるにあたっての障害は、一般の多くが「住宅地で煤煙悪臭を撒き散らす薪ストーブは周辺に迷惑であり、自他ともに健康被害のリスクが高い」ということを理解しているからです。
国民の最低限の権利、快適な住環境、きれいな空気を自由に吸える権利が侵害されている状況が日本各地で既に起きています。
薪ストーブや暖炉の既設置への遡及効も含む、設置区域及び排煙規制に繋がる施策提言が必要と思います。
木質バイオマス炉、薪ストーブ、暖炉による大気汚染について、調査研究を進めて頂きたいと思います。
編集部より:この記事は青山翠氏のブログ「湘南に、きれいな青空を返して!」2022年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「湘南に、きれいな青空を返して!」をご覧ください。