円安で日本人は益々「ひきこもり」になる

円安が進んでいます。今朝は1ドル=127円台まで米ドルに対して円が下落しました。

TommL/iStock

国内にいると気が付きませんが、コロナ禍が一段落してこれから海外に出かけると、海外の物価の高さに驚く日本人が増えるはずです。円安だけではなく、インフレによって海外では価格上昇しています。為替と物価の「掛け算」による円ベースでの価格上昇インパクトは想像以上です。

更に、航空運賃もエネルギー価格の上昇や、ロシアの航路規制、そして需要の拡大によって上昇しています。実際、GWに出かけるカンボジアまでの航空運賃は、以前の2倍以上になっていてビックリしました。

こうなると、わざわざ物価の高い海外に高いコストをかけて行くより、国内の格安な観光地に行こうという日本人が増えるはずです。

以前は、憧れだった海外赴任も、今や行きたがらない人が増えていると聞きます。また、海外留学も日本人の数は少なくなっているそうです。日本の生活環境が快適過ぎて、海外に行くインセンティブが無くなってしまったのです。

さらに、海外旅行者数も減っていく。円安で日本人は益々「ひきこもり」になっていきます。

一方、外国人から見れば、円安になれば日本は安くて魅力的な場所になります。

清潔で治安が良く、人が親切。観光地はたくさんあるし、食事も安くて美味しい。インバウンド需要は、円安で以前よりも更に盛り上がるかもしれません。

そして、投資資金も流れ込んできます。日本企業を買収するコストは下がりますし、不動産も円安で割安になっていきます。外資による「日本買い」が始まることになるでしょう。

日本企業は円安で逆に海外進出も出来なくなり、個人投資家による海外不動産投資も下火になっていくことでしょう。

私が大学生だった40年近く前の為替レートは、確か1ドル=260円くらいだったと思います。「地球の歩き方」を読んで、アメリカに行き、グレイハウンドバスで西海岸から東海岸まで横断しました。その時は、20ドル以下で泊れる宿泊場所を毎日探していましたが、それでも5000円以上でした。

これからの日本は、時計の針が逆回りするように、「あの頃」に近づいていくことになりそうです。何だか寂しい気分です。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。