ロシア諜報員はメキシコに一番多い
3月24日、米軍北部司令官グレン・ヴァン・ハーク将軍は米国上院の武装サービス委員会の公聴会に出席して「現在世界でロシアの連邦軍参謀本部情報局(GRU)の諜報員が最も多いのはメキシコだ」と指摘し、「彼らロシアの諜報員は米国への影響力を持つ機会をより近くから見つけようとしている」と述べた。
メキシコは米国と国境を接していることからその機会の訪れることが多いとロシアは見ているのだ。実際、中南米にあるロシア大使館で最大規模はメキシコにあるロシア大使館だ。ロシアの諜報員の活動ベースは大使館からというのはよく知られたことだ。彼ら諜報員は表向きは文化や商業担当官といった肩書で入国している。
この発言を裏付けるかのように、在メキシコの米国大使ケン・サラザール氏は「ロシアの我が国との関係が遠くないのは(在メキシコ)ロシア大使ビクトル・コロネリ氏がアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領に同国がロシアへの制裁に加わらなかったことを感謝したことからも窺えると」と、皮肉を述べてメキシコとロシアがより円滑な関係にあることを説明してロシアの諜報員がメキシコに潜むことが容易であるかのような指摘をした。
例えばメキシコから米国へのアクセスがあった出来事として2020年に発覚したことがメキシコ紙「ミレニオ」が3月24日付にて触れている。それによると、メキシコオアチャカ州出身の科学者ヘクトル・アレハンドゥロ・カブレラ氏が米国でロシアの為の諜報活動をしていたとして2020年に逮捕された。そして昨年2月に有罪の判決が下された。
同様にメキシコ紙「エル・ウニベルサル」が3月24日付にて報じているのは、2018年にGRUのメンバー12名が大陪審員によって有罪と判決された事件があった。これは2016年にヒラリー・クリントン候補者の郵送サービスのメンバーとして彼らが密かに入り込んでいた事件だ。
ハーク将軍が同公聴会で安全面という点で表明したことのひとつとして、トランプ政権時にメキシコの国防軍に米国との国境警備への負担を増大させて米軍による警備を軽減させた。このことが米国の安全面において災いするのではないかという懸念があることだとした。そしてハーク将軍は「米国の国土安全保障省に十分な資金と必要な手段を提供することと国防省は国境警備を支援すべく極限まで時間を費やすことだ」と述べた。自国の安全警備は自国軍がやるべきでメキシコ軍に一部依存することに納得のいかないことを表明したのである。
メキシコ政府の反論
今回のハーク将軍の発言に苛立ちを表明したのはメキシコのロペス・オブラドール大統領と次期大統領候補として目されているマルセロ・オブラルド外相だ。
ハーク将軍が発言した翌日にロペス・オブラドール大統領は「メキシコはロシアの植民地ではない。同様に中国そして米国のそれでもない」と断言した。またオブラルド外相はメキシコ紙「エル・ウニベルサル」によるインタビューの中で、「米軍人の発言は単に一つの憶測を表明しただけである」と述べて、それが十分な根拠のもどづくものではないとし、と同時にバイデン政権がロシアとウクライナイの紛争に関してメキシコが取るべく方向付けを示そうとしていることを拒否した。(3月30日付「インフォバエ」から引用)。
メキシコで70年振りにロペス・オブラドール氏による左派政権が誕生して以来これまでの米国に従属した外交からメキシコ独自の外交を編み出そうとしている。それが特にバイデン大統領政権になってから両国の対立が目立つようになっている。