「人は見た目が9割」という言葉は今や誰もが知ることとなった。そして多くの場合、この言葉は正しく機能している。なぜなら内面が見た目に現れるからである。暴走族が威圧的な衣装を着るのは、「威厳をまといたい」という内面の願望がその外見を作り出していると言える。
しかし、この話はあくまで一般論として機能する話であり、一部の優秀なビジネスマンにおいては見た目の判断によらないケースもあると思っている。つまり、見た目に現れない1割で意思決定をするということだ。あくまで筆者の肌感覚による独断で論考したい。
ビジネスも「見た目が9割」
不特定多数に商品サービスを届けるビジネスの世界においては「見た目が9割」は強く機能する。
たとえばYouTubeは視聴者の可処分時間を奪い合うゲームだが、サムネイルやキャッチコピー、さらに動画冒頭の30秒間で視聴されるかの9割が決まる。すでに分厚いファン層が出来上がっているなら話は別だが、そうでない場合は検索されるワードや、視聴者に刺さるキャッチコピーなどで見た目を整えなければ、そもそもクリックされない。するとYouTubeのアルゴリズムが視聴者におすすめとして出さなくなるので、存在を可視化されることもないのだ。そうなると、存在しないのと同じになる。もちろん、肝心の内容の質も伴っている必要はある。見た目が良くても動画の中身の質が低ければ、視聴維持率が低くなる。そうなると初速こそ出たとしても、その勢いは継続しない。
見た目が9割の原則は、オフラインにおいてはさらに強く機能するだろう。ヨレヨレのスーツのビジネスマンから高額商品を買いたいと思う人はいないだろうし、メイクが下手な販売員から、化粧品を買いたいと思う人もいない。飲食店などではさらに顕著で、入り口がこぎれいでなければ入店すら敬遠される。
ビジネスの世界は見た目が9割だ。資本主義社会は他者との競争が前提であり、代替品がある以上は競争に負けないために、否応なしに見た目を整える必要性から逃れることは非常に難しい。例外があるとすれば、ニーズがある分野で競合の存在を許さないレベルの高い実力がある場合だろう。
優秀な人は「可視化されない1割」を見抜く
人は見た目が9割というのは間違いない。だが、一部の優秀なビジネスマンは残り1割の中身を見るケースも少なくないのでは?という持論を筆者は持っている。
このツイートによると、シリコンバレーのIT企業は「コミュ力に優れない、しかしスキルが高い優秀な人材」を排除してしまわないための工夫をしているという。
ビジネスにおけるコミュニケーション能力も、自分の能力を飾る機能性であり外見を彩る一要素と考えると、これは見た目によらない人選のケースと言えるのではないだろうか。事前に人選のエラーの想定ができるのは、明らかに優秀な人といって差し支えないだろう。
見た目が9割によらない体験談
また、筆者は有能な人物などではないが、個人体験的に「見た目の9割」だけで判断するべきでなく、「中身の1割」にも着目する必要性があると感じている。
ある時、自社の採用面接にスーツではなく私服でやってきた人がいた。「大丈夫かな?」と一瞬思ったが、面接のやり取りをする中で、その女性は非常にコミュニケーション能力が高いと感じた。一般常識は欠けているかもしれないが、この才能を捨ててしまうのはもったいない。そう感じて採用を決めたが、これが大当たりだった。今では社内随一の、カスタマーサポートの仕事をこなしてくれている。
また、別のケースで短期バイトを募集したが、金髪で派手な格好をする男子大学生がやってきたことがある。初見は驚いてしまったが、彼の初日の挨拶や仕事っぷりをみて「この人は非常に能力が高い」と感じた。「できたら短期ではなく、今後も長く働いてほしい」とスカウトして採用した。
自分の会社は大学生アルバイトを迎えることはよくあるのだが、真面目そうな格好をしていても目を離すとおしゃべりばかりで仕事をサボる人もいる。そんな中で、彼は見た目が派手なだけで、真面目に働くし能力も非常に高かった。結果、これは大正解で彼は大学1年から卒業するまでずっと働いてくれ、とても高いパフォーマンスを出し続けてくれたのだ。
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物事を評価するというのは、非常に難しい行為である。特に短時間で人間の能力を評価する多くの場合、相手よりこちらの力量が相当上でなければ正確な評価など不可能である。時間の制約もあり、必然的に見た目の9割の判断に頼るケースが多くなるのだが、残りの1割にも目を向けることで可視化されにくい宝を掘り当てる事ができると思っている。
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