市場の風向きに微妙な変化が訪れる予兆

日々、マーケットとお付き合いしていると微妙な変化をカラダで感じるようになります。中学校2年生以降、45年間もその世界にいるというのは証券会社にお勤めになった方より長い年月とも言えます。しかも自分のお金を投じ、投資信託のような「お任せコース」ではなく、常に自分で銘柄を探し出すので「甘い、酸っぱい」といったセンチメンタルなレベルどころか、自分の資産がぶっ飛んだことも数知れずあります。そんな経験は決して無駄ではなく、市場の風を感じるようになります。

alexsl/iStock

今、市場では何がテーマでしょうか?

資源高、物流の混迷、人材のミスマッチ、低い失業率、株価の先行き不透明感、金利上昇、物価高、スタグフレーションリスク、円安、中国コロナ封鎖… いろいろあります。折しも北米では1-3月期の企業決算発表時期となり、明暗を分けた形になっています。そもそも「コロナ景気」と称する抑圧反動の消費ブームは昨年末まででした。今年に入り、より平常心をもった消費行動と生活パタンに戻ってきています。

折しもの物価高で賃金上昇が物価水準についていかず、消費の足が鈍る状態が見えてきました。本来であれば旅行もこの夏は大いに期待できるところですが、ガソリンを含め、あらゆる物価水準は日本にいる方には想像できないレベルです。もしもこの夏、北米に旅行を計画されている方がいればその物価ギャップに旅行気分も消沈するはずです。私の肌感覚ではカナダと日本の物価差ですら5割ぐらいあります。

そんな中、円安が急速に進み、一時対ドルで129円台までつけました。私の見立てはこの円安トレンドはそろそろ終わり、行き過ぎた分を円高に戻す可能性を見て取っています。一つ目の節目は5月3-4日に開催されるアメリカFOMCで、ここで現状0.50%ポイントの利上げの確率がほぼ100%見込まれています。つまり株式市場や為替市場では既にそこは織り込み済みで次のネタを探しているわけです。その時に出るフォワードガイダンスは統計的には今、我々が手元に持っているものと同じものをベースにしており、大幅な軌道修正をするネタはないとみています。

次いで5月6日に雇用統計がありますが、それよりも最大注目は5月11日発表のCPI(消費者物価指数)でこれがどの程度になるのかにより今後の金利の行方なども市場の解釈が進むことになります。

私が市場の風向きが変わりそうだ、というのはFRBが予想する年内2.25%程度の利上げは現実的ではないという声が今後急速に広がりそうだ、という点です。既にその兆候は見受けられます。アメリカ金融機関のアナリスト、実務担当者レベルではインフレは4-6月でピークアウト、現在は景気の潮目にあるという実感の声が出始めています。

FRBの予想は今日時点のインフレ率や景気動向を加味すれば金利をあと2.25%上昇させるかもしれないけれどそれを徐々に引き上げていく過程において経済の自動調整機能はレバレッジが効いた形で変化を起こし、消費エネルギーは想定以上に早く下落する可能性が高い、という読みです。またそれを後押しするのが資源価格の上昇で人々のマインドに「物価、高い、電気もガソリンも高い。生活不安がある」という印象が北米でも大きく広がっており、消費を楽しむどころではないというのが本音になっています。

極端な話、オセロゲームのような180度転換型の風向きの変化もあり得るとみています。

そう考えると、アメリカの金利の先行き(フォワードガイダンス)は今より積極的な利上げ見通しは消え、より緩和的ハト派的な展開の可能性が出てきます。これはドル円にとっては円高のバイアスがかかるわけです。「山高ければ谷深し」ですので為替に関しては近いうちにピーク打ちでその後わりと急な為替修正局面があるとみています。

但し、資源価格の先行きは私がかなりの資金を投じていることもあり、丁寧に読み込んでいますが、原油は高原状態を維持する可能性はリスク要因として見ておいた方がよい気がします。どこかの記事に「プーチンは原油高を狙って戦争をしている」などとありますが、それは主たる理由ではなく従たる果実です。どう見ても当面は原油の供給は今後、需要に見合ったものに追いつきません。ガスも同様。よって原子力発電はいやが応でも再度注目されるとみています。

また、私が1年ぐらい前から言っているスタグフレーションの影がまた一歩忍び寄ってきているともいえそうです。

私はコロナ時の各国政府の度を越したバラマキ景気は一種の麻薬だったと思っています。経済が覚醒したのではなく、経済をかく乱したとすら思っています。こちらについても山深ければ谷深しです。原油は真逆で谷深しだったから山高しになったともいえそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月26日の記事より転載させていただきました。