中国過剰コロナ対策のツケ

Robert Way/iStock

習近平氏のゼロコロナに対するこだわりは権威主義国家ならではの事態と言ってよいでしょう。ロシアが同様の権威主義に基づき、無謀な戦争を止める気がないのと同様、中国はネズミ一匹逃さないという発想でコロナ一人許さないという鶴の一声で国民や取り巻きがどう思おうが、全て自分を正として行動をします。

先日のブログに「世の中に正解はない」ということを書きました。選択肢があっても、両方をお試しするチャンスがないためでその結果だけを見てよかった、悪かったと判断しますが、それが最善の選択だったかわかる方法はありません。もしかすると中国のゼロコロナ対策はかつて欧米で見たような異様な感染者の増加で医療がひっ迫し、おびただしい死者が出たことを考えればロックダウンぐらい、死ぬよりましだろう、という姿勢かもしれません。先々「習先生は我々の命の恩人だ」と国民が喝采するシーンを想像できなくもありません。

しかし、我々も経験したようにコロナ対策と経済は表裏一体で微妙なさじ加減、バランスが必要なのはほぼすべての人が体得したとおりです。一旦経済を止めてしまえば、それに伴う経済的損失は甚大であり、人々の生活を維持することすら難しいケースが出てきます。更にフラストレーションはより高まり、抑えられない感情を爆発させれば当局に連行されるのがオチだとすればやるせない気持ちになるのもよくわかります。

ここにきて原油価格が下落しています。理由は北京もロックダウンするのではないか、そうすれば原油の中国での需要が落ち込むだろう、というシナリオです。同様に高値を保ってきた商品価格も当然、冷や水を浴びせたような状態になっています。

北京の朝陽区は北京の高級住宅街で重要地域ともされますが、そこでこの4-5日に100人に満たない陽性者が出たことで北京もロックダウンか、と中国国内はもとより世界中にニュースが駆け巡っています。中国の統計ですのでこの100人足らずが実際にどれぐらいなのかわかりません。が、それにしても私はこのネズミ一匹を捕まえる努力は「大山鳴動して鼠一匹」(騒ぐ割に成果がないこと)ではないかという気がしてなりません。

中国の経済は既に指標的に悪影響が出ています。上海総合指数はロックダウン騒動が始まってから15%近く下落、それまで比較的強かった中国元も5%ほど下落しています。国際的な経済機関やアナリストも中国経済、とくにGDPの先行きを下方修正するものが相次いでいます。物流は滞り、日本は少なからずの製品を中国に依存するため、欠品が相次ぐ事態が生じています。

中国は非公式ですり合わせ的イベントである北戴河会議、そして秋に開催される5年に一度の党大会を経て習近平氏の再任が決まります。習氏が一定の成果をベースにこの党大会を乗り越えるつもりであれば、このところ目立った功績が少ない習氏にとって「コロナの封じ込め」は自己アピールには絶好のチャンスです。ただ、それは経済的ダメージに目をつぶっている点は誰もがわかっていることであり、対策が進まない不動産業界のリストラやアメリカ製品が入らない中国ハイテク産業の寒い事情は今後、更に厳しさを増すものと思われます。

もう一つはアメリカが中国放置プレー状態になっている点です。トランプ氏時代には様々なバトルがありましたが、バイデン氏は問題を避けているのか、他のことが急がしくて手が回らないのか、さっぱり声が聞こえてきません。この米中の冷たい関係はウクライナ問題が後押ししていることもあるにせよ、個人的には中国がどんどん内にこもる政策に走っているように思えてなりません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月27日の記事より転載させていただきました。