ロシアは旧ソ連に逆戻りしているというのがロシア市民の印象

モスクワのスーパーマーケットで空になった棚の前を歩く女性
EL Pais

物資不足と物価の高騰に直面、抗議もしないでいるロシア国民

ロシア国民は制裁、孤立、物質不足から旧ソ連に逆戻りしているような印象を受けているという。僅か2か月前まですべてが平常通り機能していたのが突如ソ連が崩壊した90年代を思い出させるような状況に現在市民が置かれているという。

物資不足からまとめ買いに5キロの砂糖を購入しようとして1時半も列に並んで待たねばならなかったと語るのはビクトル・ナザロフさんだ。

ルーブルの下落で服など輸入ものは価格が高騰している。同様に市民を不安にさせているのが輸入に頼る医薬品の不足である。既に80余りの医薬品が不足しているという。例えば、インシュリンや小児用の抗炎症薬などがそうだ。(3月22日付「エル・ディアリオ・エス」から引用)。

ルーブルの下落と言えばロシアの平均給与は5万4687ルーブル(6万3000円)がウクライナ侵攻前はおよそ640ユーロであったのが3月末の時点で490ユーロにまで下落したそうだ。(3月26日付「エル・パイス」から引用)。

経済力は韓国レベル。それが軍事力では世界2位

GDPでは世界で韓国とオーストラリアの間に位置しているロシアが軍事力においては世界で2位を占めている。このアンバランスを維持するために犠牲にされているのがロシア国民の低い生活レベルである。しかも、ルーブルの下落で生活はより苦しいものになっている。その原因は、独裁者プーチン大統領のウクライナ侵攻によるものであるというのは多くの国民は知っている。しかし、それを口にしてはいけないし、また抗議デモもしてはいけないことになっている。それをすれば拘束されて収監されることになるからだ。

例えば、ロシアの国営調査機関(VtsIOM)が3月の世論調査で74%の国民がウクライナへの侵攻作戦(一般に特別作戦と呼ばれている)を支持していると表明した。ところが、この調査は3万1000人を対象に電話で実施されていたが、その2万9400人は受話器を取った後に回答もせず電話を切って受話器を置いたというのが真相だったのである。軍隊が戦争に参加している時は誰もが不安に駆られている時で、そのような時点で世論調査をするということ自体が無謀だ、とツイートで指摘したのは政党ヤブロコのマクシム・カルツ議員だ。(同上「エル・パイス」から引用)。

制裁の影響で失業者が急増

モスクワのシュレメチェボ国際空港は離着陸する飛行機と乗客の激減とで現在勤務している従業員の5分の1を削減せねばならない必要性に迫られているという。(同上「エル・ディアリオ・エス」から引用)。

同様に外国企業のロシアからの撤退の影響でおよそ20万人の雇用を失うことになるとモスクワのセルゲイ・ソビアニン市長が表明している。(4月18日付「フランス24」から引用)。

またロシアのポベダ航空は運航機材B737を45機から21機に削減することを発表した。(同上「エル・パイス」から引用)。

ロシア通信連盟のセルゲイ・プルゴタレンコ会長は情報関係の頭脳流出として5万人から7万人が国を去ったことを明らかにした。。(同上「エル・パイス」から引用)。

今の時点ではロシア経済の大幅な後退は観察されていない。しかし、今年10月頃からは非常に厳しい経済の後退を迫られることになると予測されている。

その一方でプーチン大統領はウクライナへの侵攻を継続して行くであろう。敗戦と判断されるような撤退は絶対にやらない。それはプーチン大統領の失脚を意味するものになるからだ。しかし、一つの目安が5月9日の対独戦勝記念日だ。それを区切りに終戦にするか、または更に侵攻を拡大するか。全てプーチン大統領の判断次第だ。