憲法論議の重要性を突きつけた今年の憲法記念日

何はともあれ、憲法審査会が動き始めたことは、それなりに評価していい。

憲法改正の議論が進んでしまうことを阻止するために憲法審査会の開催自体を阻止することに全力を注いでいたように見える政党や国会議員の方がおられたことがそもそも異常だったのだが、そういう方々の発言力や影響力が低下したことはよかった。

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問題は、憲法審査会でどの程度問題を掘り下げ、国民にどのような提案をすることが出来るかだろう。

私が見ている限りでは、まだ中山憲法調査会当時の議論を超える周到な議論を体系的に展開する国会議員は現れていない。

憲法論議を深めるべき時期に来ていることは明らかだが、くれぐれも結論を急がないことである。

自民党が提案する中途半端な憲法改正4項目には拘泥しない方がいい。

骨太な議論が展開されることを期待している。

急がば回れである。

なお、自民党が下野していた当時に策定された自民党の憲法改正草案はかつての中山憲法調査会当時の議論を踏まえておらず、とても国民的議論の対象には出来ない代物だと思われるので、早々に撤回された方がいいだろう。

憲法遵守義務はあっても、憲法改正の議論をすること自体には何の問題もない

憲法は日本の最高法規範だから、公務員に憲法遵守義務があることには異論がないはずである。

それでは、憲法遵守義務があるからと言って憲法改正の議論をしてはならないか。

まあ、現在の日本の憲法は完全無欠の世界で唯一の無謬の最高法規範だという立場に立たれるのであれば、憲法改正の議論などすべきではない、ということになるのかも知れないが、そんなものはない。

現在の憲法にも憲法改正の手続条項が明記されているのだから、憲法典の記載からも憲法は憲法改正の議論を封じていないことが明らかだ。

憲法改正の議論を進める政党を蛇蝎のように毛嫌いする国会議員が立憲民主党にいるようだが、立憲主義を標榜する政党に所属する国会議員がそういう暴論を吐いてしまうことは看過出来ない。

速やかに訂正された方がいいだろう。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2022年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。