株式市場の夜は明けるのか?

北米で投資をしている方は目も当てられないでしょう。株価が溶ける、仮想通貨の価値が蒸発する、そんな状況だと思います。ただ、夜明け前が一番暗いとも言います。個人的には節目の変化がかなり近い気がしています。もう少しの辛抱だと思います。

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まず、一昨日のアメリカCPI(消費者物価指数)は前年比8.3%上昇と事前予想を上回りました。ところが発表後、前年比ではなく、前月比でみるとインフレが更に進行しているという事実が一気に展開され、金利の更なる上昇懸念から株式は大きく売られました。

ただ、個人的にはやはり、物価高のピークにあるように感じます。物価高に歯向かうほどの強い消費意欲はさすがに減退しているからです。住宅着工件数は落ち込み、夏の旅行プランはより小さいものに変わるだろうと専門家は予想しています。レストランには空席が目立ちます。確実に言えることは物価が延々と右肩上がりになることはないのです。理由はアフォーダビリティがなくなり、消費余力が物価に追いつかなくなるからです。そうすると価格調整機能が働きますので物価上昇感は冷えてきます。

では今回の物価上昇要因は何か、といえばポストコロナ、半導体不足、資源高、ウクライナ問題、中国の都市封鎖が主因として挙げられます。そのうち、世界に最も心理的影響を及ぼしているのがウクライナ問題です。これがそろそろ新展開してもおかしくない気がしています。

プーチン氏は対独戦勝記念日までに一定の成果を上げることを期待し、国民を「歓喜の渦」に巻きこむつもりでした。が、失敗したプーチン氏は目先の日程的な目標を失いました。一方、フィンランドがNATO加盟を申請し、隣国の「緩衝地帯政策」がついに崩れることになります。この緩衝地帯政策は第二次世界大戦後からずっと行ってきたソ連/ロシアの基本政策でした。そしてフィンランドの中立政策は大学の授業でも出てきたほどでしたが、教科書を書き換える方針の大転換となります。

中国の高玉生、元駐ウクライナ大使が「ロシアの敗戦は時間の問題だ」との論評したネット記事が出てすぐに削除されたと産経が報じています。知見を持つ方の意見でありますが、うがった見方をすれば中国がロシアに「そろそろ幕引きを考えよ」とフラッシュ情報を与えた作為ではないかという気がしています。習近平氏はドイツ首相とのオンライン会議で戦争を止めるべきという明白なポジションを見せており、中国はロシアの肩を持つと言われながらもその真意をつかみかねる状況です。

私が習近平氏ならばむしろ停戦に積極的にかかわることで自らの功名とし、秋の第3期目の就任を盤石なものにするでしょう。ロシアの包囲網がかなり狭まってきたとすれば停戦というトンネルの向こうの光が株式市場に与える影響は大きいとみています。停戦と勝敗の決着とは別次元の問題だと思いますが、今は戦禍が止まることが重要です。

また、コロナ対策が問題視されている中国ですが、WHOのテドロス事務局長がゼロコロナ対策が持続可能だとは思わない、と発言しています。中国外務省は「余計な事」と吠えていますが、たぶん、重要なシグナルになる気がします。上海郊外の工場はゆっくりと再稼働し始めており、中国が方針を緩めればサプライチェーンの問題も時間はかかりますが、解消への道筋が出来てくるとみています。

今、市場に必要なのは明るいニュースです。こういう状況ではチャートは読めません。きっかけを探し、反転のタイミングを見るしかありません。例えば円相場が反転して急速な円高に向かうかもしれません。私がアメリカCPI発表が転換点と数週間前から申し上げていましたがそうなるかもしれません。市場はニュースのインパクトとモメンタムが支配することが多くなります。

例えば仮想通貨の大暴落ですが、これはステーブルコインの「テラ」が一時8割も急落したことが原因です。その理由は同コインがアルゴリズム型方式を採っていたのですが、それが想定以上の事態となり、想定機能を突き破っただけの話です。つまり、ステーブルコイン全部が否定されたわけではく、まだ穴だらけの仮想通貨の仕組みの一部に瑕疵が見つかっただけです。これに市場が異様に反応しただけと考えるべきでしょう。よってこちらも時間はかかるかもしれませんが、仮想通貨の市場もいずれ戻るとみています。

結論から言うと株式市場の夜は明けます。それが2週間後なのか、1か月後なのかはわかりませんが、さほど遠くないと思います。私は年初に今年の株式市場は乱高下、よってダウや日経平均の予想はしない、と申し上げました。大きく波打つ市場に飲まれるか、波乗りするかで成果は大きく変わってくる、そんな状況だと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月13日の記事より転載させていただきました。