航空機リース事業を日本企業は管理できるのか?

三井住友系の航空機リース会社、SMBCアビエーションキャピタル社(505機運営)はアイルランドに本社があり182機で事業展開するゴスホーク社を買収し、業界第2位に躍進すると報じられています。久々の日系企業の世界での活躍ぶりの記事です。今日はこの航空機リース事業、ひいてはリース事業について少しのぞいてみましょう。

spooh/iStock(イメージ)

コロナ前、私が最も期待したビジネスの一つが航空機リース事業でした。事実、私はカナダの複数の航空機リース事業会社の株式を数年前に購入し、今でも所有し続けています。基本的には配当性向が高いというのが特徴です。ただ、コロナで世界の空に飛行機が飛ばなくなった頃は青ざめましたが、リース料が払われないわけではなかったため、株価は比較的落ち込むことはありませんでした。

私が長年お世話になっている損保会社にお勤めの方が転勤で航空機リース事業部門に転属になると聞いた時、その方に「超花形で将来性が高い事業ですからきっと会社もあなたに期待を託したのでしょう」と申し上げたのをよく覚えています。航空機リース事業というのはそれぐらいインパクトあるビジネスなのです。理由はグローバル化で、人が動く、新興国の経済力も上昇、飛行機が足りない、でした。

コロナがようやく終息してきたと思ったら今度はロシア政府が「リースしている約400機を返さない」と宣言しました。これはリース会社にとってはとんでもない話で「貸した飛行機を略奪された」わけで保険屋に駆け込むも「保険金は出ない」の一点張りでおおもめ状態です。当のSMBCアビエーションキャピタル社も800億円の減損処理済みです。

リース会社が戦々恐々とするのは「返さない」ことをあたかも当然の権利の如く宣言されることです。これは商習慣そのものを完全に裏切る行為で将来を担保できず、ビジネス拡大にリスクが大きすぎる点が思慮されます。今、その議論が進む対象が中国。つまり、中国に航空機をリースしても国家の一方的宣言で「召される」のであれば「貸せないよね」になってしまいます。

さて、この航空機リース事業は業界の中身を見ると日系企業が大きく食い込んでいます。というか、業界上位企業には日系の商社、リース会社、金融機関が株主としてぐっと食い込んでいます。理由は資金調達コストが金利の低い日本は有利ということが後押ししたことは否定できません。

では日系企業に経営できるのか、と言えばできません。つまり、顔は全部欧米の人なのです。何故か、といえばそれら日系の出資者は銭勘定と管理業務を超えられないのです。これは別にリース事業にかかわらず事業全般に言えることですが。

リース業界というのはある意味、所有と運営を分ける点で私がしばしば提唱する「アセットライト」におけるアセットの提供側になります。この発想は航空機のみならず、貨物船でも不動産でも同じです。私のカナダの会社ではアセットを所有する会社と運営事業会社が完全に分けられており、運営会社は所有会社に適正な賃料を払っています。自分で自分に家賃なりを払うということです。私が言うのも変ですが、一切の値引きも妥協もなしです。それは関連会社の甘えを許したら事業が成り立たなくなるからです。よく「自社ビルなら賃料を払わなくてよい」という人がいますが、それは大変な間違った考え方で経営者としては絶対タブーなのです。

日本企業の強みは資金を提供したり、商社にみられるように関連する企業や事業を組み合わせ、事業ストラクチャーを作るのは上手だと思います。ところが運営、つまり会社のドライバーになると本当に未熟の一言です。何故か、その理由を書けばあまりにも長くなるし、このブログで再三主張してきたことですので今日は省きますが、これでは結局、日本企業は事業のコンダクター(指揮者)になれないなということは明白。かつ、たぶん、20年たっても変わらないはずです。なぜなら、人材が育つ気配が全くないからです。

結論からすると日本はアセットライトというコンセプトの中でアセットを所有するほうは得意ですが、「ライト」の方である運営は今後も欧米頼みになり、ビジネスの主導権は握れないということになります。「そんなのかまへん、儲かればええねん」と言われれば私なら「あんたとはそれまでよ。あばよ!」です。

そういう意味ではこの久々の経済ニュースですが、よくよく考えてみればそこまで盛り上がれないというのが私の素直な感想です。ではどうやって前線に立ち、運営ができるようになるか、近いうちに私の例でお話しさせていただきます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月16日の記事より転載させていただきました。