FIREして不労所得の「大家さん」になりたいと思わない理由

投資によって生活に必要な資金を手に入れ、不労所得で生きていくいわゆるFIREは、株式市場が変調をきたしてからも相変わらずの人気のようです。ちなみにFIREとは、「Financial Independence, Retire Early(経済的自立と早期リタイア)」の略称です。

Nuthawut Somsuk/iStock

FIREに関しては以前のブログ「若者よ!やっぱり「FIRE」はやめなさい!」で、楽観的なシナリオでFIREするのは、これからの長い人生を考えれば極めて危険だと指摘しました。

私自身も50歳になってから、国内不動産投資を開始し、不労所得が得られるようになりました。今や投資収益だけでも生活が成り立つようになりましたが、FIREしようとは思いません。

それは、将来の経済的なリスクが理由ではなく、FIREすると人生がつまらなくなると思うからです。

不動産のようなインカム型の資産は、購入時には手間がかかりますが、その後は管理会社に管理を委託すれば、手間はあまりかかりません。まさに不労所得で、楽と言えば楽なのかもしれませんが、私には単調で狭い世界に感じます。

保有する物件が増えれば増えるほど、その単調さが増していくことになり、新しい投資対象を調べたり、購入を検討するといった比率が下がっていきます。

国内不動産を保有している個人投資家の方を見ていても、何だかあまり羨ましいと憧れる気分になれないのです。

不労所得にだけ頼るのではなく、新しい投資対象やビジネスに好奇心を持って、様々な分野の様々な人たちと交流しながら、世界を広げていく。その方が、ワクワクして楽しく感じます。

FIREしてしまうと、社会との接点が減っていく可能性があります。家族との大事な時間を過ごしたいのなら、それは自由です。ただ、私には向いていないライフスタイルです。

不動産などから得られる不労所得は、自分が好きな仕事だけを選べるようにするための手段だと思っています。私にとっては、嫌な仕事を「断る力」を維持し、ライスワークではなくライフワークだけに関われるようにするために必要なものです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年5月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。