アメリカは本当に日本を守ってくれるのか?

日米安全保障条約、いわゆる60年安保に基づき、日本は軍隊を持たない代わりに駐留米軍とアメリカからの武器の購入などを介していざというとき日本を守ってもらう、という理解になっているかと思います。幸いにして今日に至るまでこの条約の根幹部分、つまり日米安全保障条約第5条が真剣に取りざたされることはなかったのですが、果たしてこの条約は機能するのでしょうか?

まずは第5条の表記は以下の通りです。

各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

バイデン大統領 United States government official Twitter より

文言をそのまま読めば日本が誰かに攻められたら守ってくれる、ということになるのですが、私が一番引っかかっているのは「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という文言です。日本が攻められた時、アメリカは自国の憲法と手続きを経て日本に参戦するということだと思うのですが、「手続き」とはすなわち、時の大統領の署名なり決定だと思います。

アメリカの大統領も人間であり、地位があり、その一挙手一投足が注目されます。歴代の大統領で戦争に積極的に取り組んだ大統領は非常に少ない、これがアメリカです。例えば第二次世界大戦前夜、ルーズベルトはそもそも選挙公約で戦争をしないと断言してきた中で「日本のサル」だけは許せないとはらわたが煮えくり返っていました。

その開戦口実が真珠湾攻撃だったのです。ルーズベルトは真珠湾攻撃を自国民や議会の賛意を得るため利用しました。それゆえに歴史の解説書の一部にはルーズベルト陰謀説というのがあり、実は真珠湾攻撃されることは傍受した通信記録で全て事前に分かっていたもののそれを放置し、無知を装ったたともされます。この真偽は不明です。

アメリカ本土が近代の戦争に巻き込まれたことはないし、アメリカはそもそも戦争嫌いです。武器を作り、戦略を立て、脅しなど声を上げるのは上手ですが、いざ、戦争の現場に行くのは苦手であり、かつ、あまり強いとも思っていません。それは侍がどれだけ切れの良い刀を持っていても剣術をしらず、根性が座っていなければ勝てないのと同じです。

私はたぶん、主流の意見とは全く相違するかもしれませんが、日本はアメリカに期待しすぎだと思います。例えば今日、日本がどこかの国から戦争を仕掛けられたとしましょう。バイデン大統領がアメリカも参戦するとすぐに大統領署名するでしょうか?ではトランプ前大統領だったらどうでしょうか?2人ともアメリカが直接的に戦争当事国になるのは反対なのです。

外交的にはここがキーです。日本に攻め込んでくる国があったとします。日本には日米安保があるから日本=アメリカへの宣戦布告だと考えるのか、そうならないとみるのかはその内容によるでしょう。例えば無人島を第三国に不法占拠された時、米軍が出てくるとは思えないのです。厳しい経済制裁などはあり得ますが、アメリカは参戦への踏み込みは極力避ける、これがアメリカの歴史であり、近代の歴史からの反省だと考えています。

ましてや仮に中国がその相手なら米中の実質直接対決となり、第三次世界大戦の引き金になりかねません。それゆえ、アメリカが日本をどう支援するのか、ケースバイケースですが、後方支援や西側諸国が連携して今回のロシアのような経済などの囲い込み作戦に留まるのではとみています。

安倍元首相は防衛費2%論を展開していますが、仮に防衛費がいくらになっても戦争になれば自衛隊だけでは戦えないでしょう。ウクライナのように国家総動員体制になります。つまり、戦費や戦力ではなく、国民が一丸になって立ち上がれるのでしょうか。そういう体制こそが緊急時には必要で武器の数や量が増えても直ちに強くなるとも言えません。

では、今、日本に立ち上がれ、と言ってどれだけの人がよし!というでしょうか?戦争というのは極限まで追い込まれた社会環境や精神の中で自ら立ち上がらねばならないという気持ちになってようやく戦意が生まれます。しかし、今の日本では老若男女、それがあるとは思えないのです。ましてや海の向こうのアメリカは何のために日本と命を賭けるのか、十分な理由が成り立たないのです。

それゆえに私は日米安保は紙の上の保証料だと思っています。現実が迫ったらならばこの通りにはならないのが世の常です。一方、日本にそのバックアッププランがあるか、といえば心許ないというのが私の個人的な意見です。日本は敵に囲まれていることを改めて認識すべきなのでしょう。ウクライナのような地上戦が再び起きるとまでは言いませんが、自立できるだけの軍備強化と圧倒的兵力と国民の団結力を磨く検討こそ必要ではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年5月22日の記事より転載させていただきました。