30年間の右肩下がり…日本から和菓子が消える日

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

和菓子は我が国の食文化である。だが、そんな和菓子が今、消えようとしている。原因はよく言われる「若者の和菓子離れ」「人口減少」というより、日本人が和菓子を食べなくなり、洋菓子を口にするようになったからである。いつか日本から和菓子は消えてしまうのだろうか?

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筆者は祖父母が駄菓子屋を経営する家庭で生まれ、幼き時期は和菓子と共に育った記憶がある。また、経営するフルーツ会社の果物を、料理研究家の和菓子に使われる機会もある。そのため、この現象について指を加えて見ているわけにはいかず、筆を執ることにした。

和菓子の消費量は30年間減少を続けている

農畜産業振興機構の調査によると、和菓子は1993年に生産量のピークを付けて以来30年間右肩下がりとなっている。この要因を「人口減少で消費量が減った」「若者が和菓子を食べなくなった」とするべきではない。なぜなら、総務省の家計調査のデータ上では、洋菓子の消費は増加しているからである。このことからわかるのは、日本人の菓子に対する消費行動が、和菓子から洋菓子へとシフトしたということだ。日本人は和菓子を食べるのをやめる代わりに、洋菓子を食べるようになった。

しかし、和菓子の提供者も手をこまねいているだけではない。昨今ではフルーツ大福のヒットが全国的に見られており、東京などの都市圏だけでなく地方でもフルーツ大福を取り扱う店舗が出ている。特にフルーツ大福は色とりどりのフルーツの美しさが映えることから、SNSへの投稿機会増の後押しもあったと筆者は見ている。

だが、フルーツ大福の隆盛だけでは、和菓子全体の消費底上げには到底及ばない。和菓子の消費量の減少が止まらなければ、我が国の文化として潰えてしまう命運をたどる可能性も否定できない。今の若い世代が和菓子を口にする機会が減少すれば、彼らが歳を重ねてから急に和菓子を口にする行動様式が生まれることはなくなる。必然的にさらなる先細りが懸念されるだろう。

頼みの綱は外国人消費

コンビニや通販などでも、洋菓子の消費機会は拡大を続けている。このままでは和菓子の消費拡大は失われ続ける一方である。だが、活路はある。個人的には「外国人消費」だと思っている。

日本で働いていたアメリカ人ビジネスマンは、日本の和菓子の魅力に目をつけアメリカで和菓子のサブスクビジネスをはじめて成功を収めている。日本の文化を紹介するYouTuberは自身の動画の中で、こぞってこの和菓子のサブスクを紹介している。紹介プログラム(アフィリエイト)を導入することで販路を拡大しようという算段である。そしてこの試みは今のところうまくいっているように見える。

無根拠に日本を持ち上げる趣味はないのだが、甘すぎないデザートとして、「WAGASHI」はシリコンバレーのオフィスにも入り込むようになった。皮肉なことに和菓子の魅力の伝道者は日本人ではなく、外国人なのである。

今は円安も手伝い、日本への観光を希望する外国人が入国の緩和のタイミングを待っている段階だ。うまく観光ビジネスがワークすることで、和菓子の魅力を自国に広め消費の下げ止まりに一役買ってくれる人が現れることを期待したいと思っている。

和菓子は我が国の文化である。国の文化を守るためには、積極的に世界に打って出ることが肝要なのではないだろうか。先に述べた通り、和菓子を支持する外国人は間違いなく存在する。和菓子のサブスクは日本人から見ると相当高額だが、それでも広告費を払い、しっかりビジネスとして成り立つほどヒットしているのだ。いつまでも外国人だけに、和菓子の魅力を伝える伝道者としての仕事を任せ続けるわけにはいかない。日本の誇る和菓子文化を海外に打って出てほしいと心から願っている。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。