(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
暗号資産(仮想通貨)が暴落している。ビットコインは1単位の価格が、昨年(2021年)11月の最高値の6万8000ドルから3万ドルに下がった。このような投機的商品の暴落は、バブル末期の特徴である。最近では、暗号資産と同じブロックチェーン技術を使ったNFT(非代替性トークン)の価格も暴落している。
暗号資産は単なるデジタル符号であり、それ自体には利用価値がない。金のように装飾品に使うことも、絵のように飾ることもできない。その価値は、他人が自分の買った価格より高く買うだろうという期待だけに支えられている。しかしバブルは終わっても、ブロックチェーンには大きな可能性がある。
バブルの主役はブロックチェーン
投機が投機を呼ぶのは1990年代末のITバブルと同じだが、今回の特徴はウェブ3と呼ばれるブロックチェーン技術が主役になったことだ。これはインターネット以来のデジタル技術革新で、複製に膨大な計算時間が必要なので、偽物がつくれない。
このような暗号技術は著作権法のような法律でデジタル符号を保護するよりはるかに効率的だが、通貨としては使えない。投機の対象になり、価格が大きく変動するためだ。その欠点をなくすためにつくられたのがステーブルコインだが、その1つであるテラUSD(UST)の価格は90%以上も下がった。
暗号資産の価格はドルにペッグすれば安定する。これは1973年まで行われていた固定為替相場のようなもので、その仕組みはいろいろあるが、最も単純なものはテザーやUSDコインのように、暗号資産と同額のドルを発行元が担保として預金し、請求があれば1ドルと交換するものだ。だが、これはプリペイドカードと同じで暗号資産にする意味がない。
日銀法3条も「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」と定めているだけで、日銀が内閣の方針に反する決定はできない。日銀の本質的な役割は通貨発行だが、1960年代から不況のときは金利を下げる金融調節が行われるようになった。この時期には日銀は政府に従属していたので、財源が足りなくなると通貨を増発し、インフレになることが多かった。
特に1970年代の石油ショックのときは、各国の中央銀行が金融緩和を行った結果、大インフレが起こった。政治家には金融緩和を好むインフレバイアスがあるので、1980年代に欧米では中央銀行の独立性を尊重するようになった。
しかし日本では日銀の独立性がなかったため、1980年代に政府が「円高不況」の対策のために公定歩合の引き上げを許さず、不動産バブルを誘発した。その反省から1998年に改正された日銀法で独立性を明記した。