会社員という身分からの人間の解放

働き方改革においては、普通の意味における働く時間、即ち収入を得るために投じる時間は大きく変わる。これまでは、誰においても、時間を一定にして、生産性の向上により所得の上昇を目指してきたが、これからは生き方が多様化していき、所得を一定にして、生産性の向上により働く時間を短くしようとする人も出てくるに違いない。そうなれば、そのような人に所得の源泉としての職業を問うことに大きな意味はなくなる。

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所得を得るための会社員としての活動時間を最小化して、例えば、多くの時間を自分の生きがいである登山に投じる人は、もはや会社員というよりもプロの登山家なのではないか。実際、登山家としての技能は熟練により高度化していき、プロの山岳ガイドの域に容易に達するだろうから、転職、即ち、収入を得るための活動領域を変更して、山岳ガイドになることも自然な展開である。

会社員であることの意味は大きく変わる。従来の価値観で、自分は登山家であるが、生活資金と登山に要する資金を得るために会社員として働いていると宣言することは、会社員としての自覚を欠いたことであり、社会的には否定的に評価される。真の働き方改革とは、この伝統的価値観の転倒を図り、価値観の多様性を認めることであり、会社員という立場を相対化することである。

このような会社員としての働き方は、おそらくは、生産性を高める。なぜなら、当然のこととして、明確な働くことの目的のもとで、最小の時間で最大の成果を実現するような働き方が自然に促されるからである。実は、この生産性の向上に働き方改革の大きな目的がある。要は、短く効率的に稼げば、消費活動に充てる時間と金額が相対的に大きくなり、経済の好循環が実現すると期待されているわけである。

働き方改革とは、会社員という身分に埋没させていた自分を解放する革命である。今、多くの企業で服装の自由化がすすめられていることは象徴的であって、身なりの多様性によって回復されるべきものは、人間としての個性なのである。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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