新生銀行の金利10倍キャンペーンの「魅力」

日本経済新聞電子版によれば、SBIホールディングスの傘下に入った新生銀行は、預金獲得戦略のために定期預金の金利を10倍に引き上げるそうです。

新生銀行WEBより

「高金利」定期預金はネット専用で、預入額が30万円以上の6カ月物と3カ月物は年利0.1%。これは、大手行(0.002%)の50倍だそうです。

そして、1カ月物は年0.2%と「高め」にし、新規の顧客の受け皿にするそうです。

預金金利10倍といっても、もともとの金利(0.01%)が低すぎます。

もし1000万円預けたとしても、金利0.01%が0.1%になっても、利息は年間で1000円から10,000円に増えるだけです。そこから源泉徴収されますから、手取りはさらに小さくなります。

元本保証商品しか保有したくない保守的な人には、これでも魅力があるのかもしれません。でも、投資商品と比較すれば、ミクロの世界の話です。

しかも、この商品はネット専用です。新生銀行とネットで取引をする人は、比較的マネーリテラシーの高い人と思われます。そのような人が、この程度の金利で預金に殺到するとは思えません。

今やインフレの可能性が高まっています。日銀が目標としている年間2%の消費者物価指数上昇となれば、金利が0.1%ではインフレによる目減りを到底賄うことはできません。

このキャンペーンで口座を増やし預金量を増やそうとするのは、昨今の金融情勢や、貯蓄から投資の流れに逆行する、なんだかズレた戦略に見えます。

私は長年に渡り新生銀行を愛用していますが、海外送金はネットで手続きが完了するSMBC信託銀行の方が便利になりました。国内の振り込み手数料無料という強み以外に、新生銀行には取引メリットがなくなりました。

残高維持のための普通預金を定期預金にすることがあっても、新たに資金を「高金利」定期預金のために入金する事はないでしょう。

NHKより

それにしてもSBIホールディングスが展開する新生銀行を核にして弱小(失礼!)地方銀行を寄せ集める戦略は、どうにも私には理解できません。もしかして、私のような凡人には理解できない深い深い戦略があるのでしょうか?


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。