スペイン諜報機関によるスパイ活動についての諮問委員会
スペインで60年余り存続したテロ組織エタ(ETA)が2018年に解散した。この暗殺集団とその支持者らも加わって誕生した連合政党ビルドゥ(Bildu)の下院議員がスペイン国家情報センター(CNI)のペガサスによるスパイ活動について調査する諮問委員会のメンバー加わるという出来事があった。即ち、諜報調査の対象にされていた元暗殺集団の下院議員がその調査を進めていた諜報機関の活動を審査する議員のメンバーに加わったというのは皮肉でしかない。
同様に、カタルーニャの独立を主張する政党の議員もそれに参加した。
即ち、スペイン国家の統一を妨げようとする政党がスペインの安全を守るCNIの諜報活動を調査するメンバーに加わったのである。これは皮肉でしかない。諮問委員会で議員メンバーからの質問に答えたのはCNIの前長官パス・エステバン氏である。
このCNIのスパイ活動が問題となったのは、カタルーニャを独立させるために活動していた州議会閣僚や議員そして彼らの協力者に対しCNIがペガサスと呼ばれているスパイウエアーを使って諜報活動をしていたというのが理由であった。
諮問委員会の参加資格を政府が改定::スペインの統一を乱す政党議員もメンバーに
諮問委員会のメンバーになるにはこれまでだと210議席の支持が必要であった。その為には野党第1党国民党の賛成が必要となるが、国民党はスペインの統一を乱す政党が諮問委員会に参加することなど容認するはずがない。
そこで政府は過半数176議席の賛成があれば十分だという特例を出したのである。そのようにすれば国民党、シウダダノス、ボックスの野党3政党が反対しても特例は可決できるとした。ということで、諮問委員会には独立を主張する政党と元テロ政党も加わって10人の議員がメンバーとなった。
スパイ活動はカタルーニャ独立の動きが活発になった時点から開始
CNIのペガサスによるスパイ活動は2017年から2020年までだとされている。正に2017年は10月にカタルーニャ州政府が住民投票を実施して独立を宣言した時であった。
ペガサスの対象になった人物は当時の州知事プッチェモン氏を始め、州政府の閣僚やそれを支持する組織団体カタルーニャ国民会議とカタルーニャ文化振興団体オムニウム・クルトゥラルのそれぞれリーダーの携帯も盗聴されていた。更に、キム・トッラ氏が州知事だった時の8人の賢人会のメンバーの一人エリエス・カンポ氏やプッチェモン氏の夫人ら65名がその標的とされた。
但し、その中でも18名に対して諜報活動が活発に実施されていた。その一番の媒体になったのはSMSである。
カタルーニャの独立宣言はクーデターに相当するものである。国家の統一を乱そうとした政治家に対して調査を進めて行くのは当然であろう。しかも、プッチェモン氏らはロシアや中国と接触して独立の為の資金を得ようとしていたのも明るみになっていたからだ。
ところがこれらの政党からの支持が今後も必要な過半数の議席をもっていないサンチェス首相政府はパス・エステバン長官を解任させるという挙に出たのであった。