岸田首相がドイツで6月26-28日に開催されるG7に参加した後、スペインで開催されるNATO首脳会議に出席しそうだと報じらています。個人的に興味深いのはそこにありません。韓国の尹大統領もNATO首脳会議に参加の検討をしており、事務方を現地に送り込んでいます。とすれば日韓首脳会談がマドリッドで実現する可能性が大いに出てきています。多分、日本の外交筋は既に韓国側外交部とその可能性について調整に入っているでしょう。
なぜ、この時期、しかも日本は選挙前の忙しい時期に岸田首相は韓国大統領と会うことを検討するのでしょうか?
臨む、望まざるにかかわらず、世界は連携志向が非常に強まっています。中国の王毅外相は南太平洋諸国歴訪を終えたばかりですが、精力的に回った割には成果が少なかったようです。中国はクワッド、IPEFに強い敵対意識と台湾の取り込みに対する一定の理解を求めるための外遊だったと思われます。
一方、北朝鮮の中国との連携は最近、思ったほど聞こえてきません。中朝関係は一定の結びつきは堅持されているものの時々の外交や社会情勢により離れたり、くっついたりしています。現在はどちらかといえば疎遠な関係のように見えます。但し、一部報道によれば北朝鮮は一時拒絶していた中国製のワクチン、シノバックを受け取り、軍部が先にそれを接種していると報じられています。
一時期は柳の葉を煎じて飲んでコロナをしのぐという報道もありました。多くの方は笑っているかと思いますが、柳の皮からアスピリンが発見されたことは一般の方にはあまり知られていないでしょう。その点からすれば一定の意味はありますが効果があるかは不明です。そんなコロナで苦しむ北朝鮮がこのところ、ミサイル発射にご執心になっています。これに対して「いかん!」なのか、「遺憾」なのかわかりませんが、日本は一定以上の刺激をしないよう細心の配慮をしながら抗議だけはするという「良心的対応」を繰り返しています。
もし、岸田首相が尹大統領と会った場合、トーンが大きく変わってくるように思えます。尹氏は非常に押しが強く、自分の考え方を明白に打ち出し、かつ一定の実行力と権限があります。岸田氏はバラエティ番組で「遣唐使」ならぬ「検討使」と揶揄されるほどの調整型首相です。最近は世論調査の高い支持率に反して一部から岸田氏の政策や姿勢に冷たい声が増えてきたのも事実です。実行力が問われているわけです。
NATOの首脳会議では当然前向きで戦況に対するブレイクスルーを求める声が盛んに出るであろう中で尹大統領が本当に参加するとすれば全体ムードに辛い香辛料を注ぎより熱くなるでしょう。岸田氏は押される、これが私の読みです。そして日米韓が協力して北朝鮮の蛮行に断固とした態度をとる、という共同声明シナリオではないかとみています。
日本の保守派は韓国の未解決問題の対応がまだじゃないか、といいます。これについては、韓国では徴用工問題についてはその賠償金を韓国政府が代わって払うというシナリオも検討しているとされます。実現するかどうかは分かりませんが、少なくとも文政権の時は三権分立を盾に司法はアンチャッチャブルな問題として一切そこに向くことすらしなかったことから比べれば大きな変化でしょう。
岸田首相の性格と尹大統領の性格は凹凸関係ですが、うまくいけば割としっくりくるとみています。もちろん、日本の党幹部や世論がそれにどう反応するかは別問題です。が、岸田首相が7月10日ともされる参議院選に向けたいくつかの「功績」を提示するにはNATO会議への初参加、日韓首脳の2年半ぶりの会合といったフレーバーは岸田氏の弱点である実行力とその成果という点でポイントゲットしやすい対策でしょう。
「新しい資本主義」の骨子が発表になっていますが、結局ほとんど話題にもならず、それが日本経済へのインパクトになるような展開にもなっていません。ということは選挙だけを考えれば岸田氏は外交に特化した方がマイナス点が少なくて得だとも言えます。
確実に言えることは国内情勢は初期のコロナで精気をを失った安倍氏、コロナの真っただ中で苦労した菅氏に比べてトンネルの出口が見えてきた中で登板した岸田氏はついているとも言えます。当然、経済の回復も予見できるし、底打ちから上げムードへの転換点にあることは大きいと思います。また、野党の立ち位置も非常に不可解で与党に太刀打ちできる状況にはありません。そう考えれば岸田氏は運があるともいえ、その運を日本全体に餅まきしてもらいたいところです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年6月6日の記事より転載させていただきました。