子供の頃からテクノロジーが目の前の景色を変えてくれるのではないか、という感覚がありました。地元の福山駅でもみじ饅頭の製造機械をずっと眺めていたとき、お財布ケータイにマクドナルドからクーポンが届いたとき…社会人になっても自分が生きてきた世界と違う、苦難を抱えた人たちがテクノロジーに活路を見出している景色に遭遇しました。
(前回:デジタル臨調立ち上げと進むべき道)
大手企業に勤め、自社で持つテクノロジーが人々の課題を解決し、もっと自由に生きられる社会をつくることができる。そのために自分はここにいるのだという自負もありました。しかし、実際は、目の前の古い規制と折り合いをつけなければならない現実がありました。
私が政治を志したのは、あのときの無力感が原点です。今思えば幼稚だったのかもしれません。でも私たちは何かしら社会の役に立ちたいと思いで働いていて、その思いが古いルールでくじかれるという理不尽に強い憤りを感じました。今でも、全ては解決していません。ただ、政治の道に進んだことで、道を拓く立ち位置にあると思っています。デジタル臨調の立ち上げも、私たちの未来をどれだけ自由にできるか— そのスタート地点に過ぎないのかもしれません。
これまで様々な改革が、規制改革推進会議や行政改革推進会議でも行われてきましたが、デジタル臨調はデジタル、規制、行政を一体的かつスピーディに改革を実現するために、これまでと大きく異なる点が3つあります。
- 「点の改革」ではなく「面の改革」を行うこと。横断的に全省庁の1万の法令、3万の通知通達・ガイドラインを3年間で横断的に見直します。
- 「要望ベース」ではなく「テクノロジーベース」で改革を行うこと。デジタル社会のあるべき法体系、行政組織に向けて、根本から日本の社会制度を見直します。
- 「現状の改革」だけでなく「未来の改革」も念頭においた取組を行うこと。デジタル法制局機能を整備し、今後整備される新しい法律や技術の進展を見つつ既存の法律をアップデートし続ける仕組みを実装します。
そして、デジタル社会の実現に向けて改革の指針としてまとめたのが、下記、5つの「デジタル原則」です。
1:「デジタル完結自動化原則」
手続をオンライン化したと謳いながら、実は途中から紙での作業があったり、役所の中はオフラインでやっている実態が多々あります。押印の廃止を実行しましたが、あのような慣習をどんどん見直し、入り口から出口の処理まで全てデジタルで完結し、そしてそれをロボットが自動で行えるようにします。
2:「アジャイル・ガバナンス原則」
社会環境や技術はどんどん変わるという前提の元で法制度をつくり直します。例えば、自動運転や医療機器はソフトウエアがアップデートされ日進月歩で能力が上がっていく。そうした際に、毎回書類を出して認可を取るのは時代に合いません。
3:「官民連携原則」
政府が国民との接点を全て担うのは効率的ではありません。既に国民の皆さんが使っている民間のさまざまなサービスやアプリケーションを通じて、行政手続や行政サービスが完了していくようにします。
4:「相互運用性確保原則」
インターオペラビリティとも言います。省庁間や自治体間だけでなく、企業や国同士でも必要なデータを連携・連動できるよう、システムやルールを整えていきます。
5:「共通基盤利用原則」
マイナンバーはもちろん、中小企業が利用しているGビズID、法人番号といったものを共通の社会基盤として使ってもらうことで、効率的な社会をつくっていきます。
普段の生活で意識することはなかなかありませんが、法律や行政機関は私たちが社会生活を送る上で重要なインフラです。そのインフラが古くなっていることで、私たちの事業活動や人生の設計が縛られてしまっています。
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デジタル臨調による改革が、戦後の列島改造による新幹線や高速道路整備以来の日本の社会インフラの大改造になる、と覚悟を決めて私自身取り組んでいます。これをやり切れれば、企業も個人ももっと自由に活躍でき、そのエネルギーが日本の成長を実現すると確信しています。
次回は現時点の成果について書きます。
編集部より:この記事は、衆議院議員、小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2022年6月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林史明オフィシャルブログをご覧ください。