ゾンビは生き返らない。防衛産業はもう死んでいる。

Aslan Alphan/iStock

岸田政権、自民党は防衛費を増やして防衛産業に仕事を振って、それによって振興しようとしていますが、それは無理です。防衛産業は既に死んでいます。ゾンビといってもいいでしょう。産業として死んでいます。そして将来性はまるで無い。

他国の何倍も高い単価で、低性能、低品質の装備を調達するのはこれが60年代とか70年代とかであれば許されたでしょう。今はだめでも頑張って、将来は諸外国並の性能、品質、コストで作ってくれるようになってくれ。

例えば航空産業であれば内外の民間市場に進出して、事業の規模が拡大されれば、性能、品質、コストの面で改善がなされたでしょう。それが汎用ヘリや、旅客機、輸送機、旅客機ベースの派生型などであれば尚更です。そしてそれらへの投資をメーカーがすれば、事業の規模は大きくなり、防衛装備の開発、それは戦闘機など防衛専門の装備開発にも技術は応用できたはずです。

ところが50年親である防衛省に喰わせてもらって、自分たちで稼ぐ気がない「子供部屋おじさん防衛産業」になってしまいました。

将来産業として自立する可能性もやる気もありません。国にタカっているだけです。多少目先で仕事が増えても、まともに機能、品質、コストを向上させようという気はありません。

やがては散々無駄に税金をつぎこんだ挙げ句に、コマツの装甲車や住友重機の機銃のようにバンザイして逃げていくでしょう。

そして低性能、低品質、高コストは防衛省側の責任も大きい。防衛省にまともな装備を作る能力、企画をする能力はありません。それは防衛産業が産業だという現実ができないこと、実戦を想定せず、組織内の政治と、組織防衛飲みを考えて装備開発、調達を指導するからです。当然ながら世界の現状がどうなっているのか、将来のトレンドはどうなっているか興味がありません。

ひたすら大日本スゲーと夜郎自大です。既に多くの分野で中国、シンガポール、南アフリカ、トルコ、チェコ、スペイン、UAEなどの後塵を拝しています。ですが、その現実すらみようとしない。

無人機にしてもFFOS、FFRSは能力が不足なだけではなく、ぼくが東日本大震災で使用されなかった、それは信頼性が低いことだと暴露しました。大震災がなければ600億円以上を掛けたこの2つのUAVを防衛省は「大成功」と自画自賛を続けていたでしょう。

暴露の結果、FFRSの調達は中止になりました。ですがFFRS、FFOSともに部隊は解散せずに、予算と人員を無駄に使っています。

そして復興特会を使って、サンプル調達されたボーイングのスキャンイーグルが装備化されたのは昨年度から、つまり10年かかっています。緊急性が高いと復興特会を使いながら、10年もかかるのは緊急性が高いとは思っていなかったし、無人機なんぞ必要ないよね、というコンセンサスが防衛省、自衛隊にあったからでしょう。

このためUAVの運用、開発では我が国はパキスタン以下です。

官民ともに防衛産業を発展させる能力はありません。「子供部屋おじさん」あるいは「ゾンビ防衛産業」にいくら金をつぎ込んでも蘇生はしません。

【本日の市ヶ谷の噂】
空間識失調による墜落防止を確実に行うため、先進国の戦闘機やヘリには自動衝突回避装置(automatic ground-collision avoidance system: Auto-GCAS)が装備されているが、予算不足で空自のF-15にはつけていない。F-35にはついているがアラーム音がうるさいからと装置の電源を落としている。先のF-15墜落でもこれがあれば事故は防げたのでないか、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。