日銀:追い込まれているのは誰か?

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明日、6月17日には政策決定会合で金融政策の変更をするべきである。

なぜなら、円安が止まらないということだけでなく、日本国債が暴落の危機に瀕しているからである。

今朝(米国時間の15日午後)、米国中央銀行FEDは政策決定会合(FOMC)で、0.75%の利上げを決定し、パウエルFRB議長は記者会見を行った。

0.75%の利上げというのは物凄いサプライズで、前回のFOMCでパウエル議長が次回は0.5%の利上げと、通常は行わない次回の政策への事前のコミットを表明しており、かつ、1週間前まで、次は0.5%利上げとほぼ明言していただけに、突然の変更に投資家たちもエコノミストもメディアも激しく非難するかと思われた。

しかし、市場もメディアも大歓迎ムード。むしろ、やっと気づいたか、気づくのが遅い、と利上げが遅れて、これまで小さすぎることに対する批判は繰り返されたものの、遅まきながらの軌道修正は大歓迎だった。

日本にいる我々には驚きかもしれない。しかし、これが世界の現状であり、世界標準の対応である。

日本だけが遅れている。かつ非常に稚拙な政策運営、揚げ足取りだけのメディア、つるし上げの大好きな国民、つまり駄目な社会なのである。

日銀の黒田総裁が、講演で「家計の値上げ許容度」が上昇していると発言したことで、大炎上し、黒田総裁は不適格という答え約60%という世論調査結果まで出てきた。

そもそも黒田総裁が適格かどうか、という調査などいままでしたこともないのに、この言葉尻を捉えて、伝統の権威のある某メディアが世論調査の項目に入れてしまうところが日本の終わりを示している。SNSでの炎上は言わずもがなだ。

自国の通貨とは、その国においてもっとも重要な資産である。国民国家の成立とは、通貨発行権を得ることが最大の目的だ、と考える学説もあるぐらいである。1つの経済社会の範囲とは、同一の通貨を利用する地域のことで、これを一つの経済圏と捉えるのが、古今東西を問わず共通した認識なのである。

その通貨の番人が中央銀行である。その中央銀行のトップを貶め、その組織を非難し、その組織が発行する通貨の価値を下げ、自分たちの経済圏を破滅のリスクに追い込む。

まあ、自国の首相を貶めることが大好きな国民、社会であれば仕方がない。しかも、そのトップが独裁的な権力をふるっている間は、媚び、従っておいて、弱った瞬間に寄ってたかってつぶしにかかる。それが自己の社会をつぶしていることに気づかずに。

ただ、政治に無頓着なのはわかるが、今回の愚かさは異次元だ。

円安の危機、物価高の危機に騒ぎ、それをすべて黒田総裁の責任にし、さらに彼を個人攻撃する。しかし、その攻撃が成功した結末は、通貨の暴落による極度の円安、物価高であり、不満の根本的理由を強化、拡大することを知っていながら(まさか気づいていないとか?)。

黒田総裁を追い込み、日本銀行を追い込み、その結果、自分の国と経済を追い込み、つまり、自分の生活を苦しめようとしている。

追い込まれているのは、日銀を憂さ晴らしに追い込もうとしていた自分自身だったのだ。